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これからの社会を生きる子どもに必要な学力とは?

これからの社会を生きる子どもに必要な学力とは?

親として、「わが子に幸せに生きていってほしい」と願う気持ちは、誰しも同じかもしれません。そのために必要な教育を、とお考えの方も多いことでしょう。

 

しかし、社会は日々急速に変化し、求められる力も私たちの子ども時代とは大きく異なってきています。これからの子育てにおいては、そのような社会の変化を認識し、必要な手立てを講じておくことが非常に大切です。

 

そこで今回は、「これからの社会を生きる子どもに必要な学力とはどのような力なのか」を考えていきましょう。

 

社会はどう変わったのか

 今、私たちの社会は大きな転換期にあります。


人工知能の発達により、

 

●子どもたちの65%が今は存在していない職業に就く

●今後10年から20年程度で、半数近くの仕事が自動化される

 

などいった予測がなされていることは、ご存じの方も多いかもしれません。


また、新型コロナウィルス感染症の蔓延のような、これまでの人類が経験したことのない事態は、今後も起こることが懸念されます。

大幅な気候変動によるさまざまな影響も今後どうなるのか、誰も経験したことがありません。

 

このように、社会は「予測不可能な時代」に入ったと言われています。子どもたちは、これまでの常識が通用しない、だれも正解がわからない、そうした問題と向き合って生きていかなくてはなりません。

 

そこでは、従来重視されていた「知識を暗記し、解き方があらかじめ定まった問題を効率的に解く力」だけでは不十分です。それは人工知能に任せればよいからです。

 

むしろ、これからの社会を担っていく子どもたちには、「社会の変化に主体的に向き合いながら、多様な他者と協働して、よりよい社会と幸福な人生を創り出す力が求められている」のです。

 

 

身につけるべき「学力の3要素」

こうした流れを受けて、日本の文部科学省も、時代の急速な変化を受けて2020年に学習指導要領を改定し、「学力の3要素」として、次の3つを掲げています。

 

① 知識・技能

 

「必要なのはやっぱり『知識』なの?」と思われたかもしれませんが、ここでいう知識とは「実際の社会や生活で生きて働く知識や技能」を指しています。

 

たとえば、「オリンピック・パラリンピックのメダルをつくるなら」というテーマで学習するとしたら、

 

「理科」の知識をもとに適切な材質について考え

「算数」では必要枚数や予算を算出し

「社会」でデザインに取り入れる開催地の特徴を調べ

「国語」の力で提案書をまとめる

 

……といった具合です。

 

実際の社会で使うための「知識・技能」であり、従来のように、丸暗記した知識を一問一答のテストで吐き出す、といったものではないことに注意が必要です。

 

 

② 思考力・判断力・表現力 

 情報を総合的・多面的に見て筋道を立てて考え、適切な判断を下し、考えたことを他者にわかりやすく伝える力を指します。人工知能に仕事を奪われるといわれるこれからの時代、こうした“人間ならではの力”がいっそう重要視されることになりそうです。

 

「思考」というと「ロジカルシンキング(論理的思考)」を思い浮かべる方も多いことと思いますが、それに加えて「クリティカルシンキング(批判的思考)」の力が大切です。世の中にあふれる情報やこれまでの常識に振り回されることなく、「それは本当に正しいのか」という前提から疑い、物事の本質を見極めるための思考法です。

 

この思考法を身につけると、物事を冷静にとらえ的確に判断することができるため、誘惑に負けずに必要なことを実行できるようになり、自己肯定感やストレス耐性も高まります。

 

また、「表現力」の大切さは、日本でも近年ようやく認識されるようになり、学校現場や大学入試においても、文章による表現はもちろん、スピーチやプレゼンテーション、グループディスカッションの能力を重く見る傾向が高まっています。

 

これらの力を養っておくことで、社会の中で未知の状況に直面したときにも仲間とコミュニケーションを図りながら、よりよい道を探り、ともに切り拓いていくことができるでしょう。

 

 

③ 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

ここまででお伝えしたこととも重なりますが、「主体性」は、これからの力のキーワードです。急速に変化する社会に対応するためには、変化に受け身で対処するのではなく、自ら関わり合おうとする姿勢が重要です。

 

主体性を高めることは、「自分で目標を設定し、それに向けて自分の欲求や行動をコントロールする能力」につながります。これは、いわゆる「実行機能」と呼ばれる認知機能で、ハーバード大学でも「最も育てるべき能力」であるとされています。

 

また、「協働」ももうひとつのキーワードです。「予測不可能な時代」にあっては、さまざまな他者と知恵を出し合って解決を目指すことが必要不可欠です。自分と考えが違う他者とでも積極的にコミュニケーションをとり、意見を交わしてよりよい結論を導く力が求められています。

 

近年、大学の総合型選抜(従来のAO入試)において、生徒が物事に主体的に取り組んできた経験や、他者と協働して問題を解決してきた経験などを、自己推薦書や面接で問うところが増えているのも、こうした時代の流れを汲んだものといえるでしょう。

 

 

おわりに

 今回の記事では、社会の大きな変化について、そして、その中で生き抜く子どもたちに必要な「学力の3要素」についてお伝えしました。

 

実際の社会や生活で生きて働く「知識・技能」

未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力」

「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」

 

この3つの力の重要性がおわかりいただけたことと思います。

 

学校現場でもこれらの力を養うための取り組みが行われていますが、子どもたちがこうした力を伸ばすためには、家庭での働きかけが非常に大切です。

 

毎日の暮らしの中で、子どもが自分の考えを持ってそれを表現できるよう、また、さまざまなことに好奇心をもって主体的に関われるよう、親として配慮したいものです。