発達障害のお子さんと家族でキャンプをするメリット6選
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では発達障害のお子さんとキャンプをすることについて解説します。
「夏休みなどに家族でキャンプをしたい」「けれど問題なくできるか不安」という方は少なくないと思います。
そこで本記事では発達障害のお子さんと一緒にキャンプをすることのメリットや注意点、そして発達障害の方などを対象とするグループキャンプなどに関してお伝えしていきます。
発達障害のお子さんと一緒にキャンプをするメリット6選
では発達障害のお子さんと一緒にキャンプをすることの主なメリットを挙げていきます。夏休みなどの長期休みにお子さんと楽しんでみてはいかがでしょうか。
1:攻撃性が下がる
発達障害をはじめとする障害を持つお子さんがキャンプをすると、その直後は他者への攻撃性が大きく下がる場合が多いです。
キャンプでは役割分担をして作業することになります(そうでないとお子さんとキャンプをする意味がほぼありません)。それを通じて言葉で要求を伝える能力や、周囲のことを考える能力が高まり、その影響で他者への攻撃性が下がるとされているのです。
2:自己肯定感が上がる
キャンプではお子さんにしてもらう作業も多いため、「自分も役に立った」と実感する機会がたくさんあり自己肯定感が上がりやすくなります。
発達障害のお子さんは日頃、「役に立てない」「周りについていくことで必死」などと感じる場面が多くなりがちですから、キャンプを通じて自己肯定感を育むことには大きな意味があります。
そしてもちろんキャンプで作業や手伝いをしてくれた際には、(普段の生活と同じく)きちんと褒めましょう。褒めることでお子さんのモチベーションはさらに上がります。
3:運動の機会になる
山や川沿いなど足場の悪い場所を歩く、火起こしをする、アスレチックで遊ぶ、木登りをする、魚を捕まえるなど、キャンプは運動の機会にもなります。
キャンプ以外の日常生活でも同じような効果を期待できる運動はできますが、「非日常」というワクワク感がありますから、普段以上に積極的に運動をする可能性が高いです。
また、それまでは運動へのモチベーションが低かったお子さんでも、キャンプで身体を動かすことの楽しさを実感する場合もあります。そうなれば、それ以降の日常生活でも運動を好きになってくれるかもしれません。
4:指先の動きを鍛える機会になる
キャンプ場での料理などは指先の動きを鍛えるトレーニングになります。また、場所によっては水切り(水面に石を投げて跳ねさせる遊び)で全身運動をしたり、「水切りに使う石を探すこと」で指先を鍛えたりすることができます。
5:感覚過敏が改善する可能性も
発達障害のお子さんの中には特定の感覚が苦手であったり、感覚全般に対してデリケートであったりする人が少なくありません。
ですがキャンプを通じて様々なものに触ることで、感覚過敏が改善する可能性があります。もちろん一回のキャンプで明らかに良くなるとは限りませんが、「ものを触ること」への抵抗感が薄れれば、その後の日常生活に良い影響が及ぶことでしょう。
6:親のリフレッシュにもなる
キャンプという非日常の体験は親にとってもリフレッシュの機会になります。特に都会に住んでいる方は日頃、草花を見たり、川の音を聴いたり、星空を眺めたりすることは少ないのではないでしょうか。
もちろんキャンプ場でもお子さんのサポートは必要ですが、家の中で行う場合よりも楽しくなる場合が多いです。また、発達障害などの方が参加できる「グループキャンプ」もあり、お子さんがそういったものに足を運べば、親は数日間完全に休むことができます。
真面目な方ほど「子どもから離れて休んでいいのだろうか」と思いがちですが、親もたまには休まなければどこかで限界が訪れやすくなりますから、検討してみてはいかがでしょうか。
発達障害のお子さんとキャンプをする場合の3つの注意点
続いて発達障害のお子さんとキャンプをする場合の注意点を3つ挙げていきます。非日常な体験は楽しいのですが、非日常だからこそ気を付けなければならないこともあります。
1:事前に行く場所を知らせる・スケジュールを丁寧に確認する
発達障害のお子さんは知らないものや見通しの立たないことがあると、強い不安を感じる傾向にあります。そのため事前に行く場所を知らせることが大切です。口頭で説明するだけでなく、キャンプ場や道中の写真などを見せて、イメージを持たせることをおすすめします。
また、スケジュールもお子さんと一緒に丁寧に確認しましょう。「何時から何時までは○○」「トイレはこのタイミングで行ける」などのレベルでしっかりチェックしたいところです。そうすることでお子さんの不安が薄れます。
そして一通りスケジュールなどを確認できたら、「何かわからないことはある?」と聞き、どんな細かい質問にも答えましょう。例えば「途中でお腹が空いたらどうするの?」など、親からすると取るに足らないことでも丁寧に答えることが大切です。
2:料理や各種の作業は簡単なものにしておく
特に発達障害のお子さんの場合、あまり料理や各種の作業が複雑だったり工程が多かったりすると途中で嫌になったり、パニック状態になったりする恐れがあります。そのためできるだけ簡単なものにしておくことをおすすめします。
例えばカレーを作るならレトルトでもいいですし、テントもワンタッチのものを選ぶのが無難です。もしくはカレールーを入れる、テントを固定する杭を打つなど、「特に楽しい部分」だけお子さんにさせて、他の部分は親がこなすようにするのも選択肢の一つです。
3:お子さんにキャンプに行くことを強制しない
お子さんにキャンプに行くことを強制するべきではありません。特に発達障害である場合は興味のないことには全く気が向かない傾向にありますから、無理強いしてもキャンプ場に着いてから何もしなくなる恐れがあります。
家の中でも療育(お子さんの特徴に合わせた遊びを交えた訓練)はできますし、料理の手伝いをさせるなど「キャンプでできることの一部」は家でも可能です。
また、もしかしたらキャンプ以外にやりたいことがあるのかもしれません。お子さんが本当に興味のあることであれば、(発達障害の特性も相まって)強いモチベーションを見せるケースが多いですから、「夏休みにやりたいことってある?」などと聞くといいでしょう。
発達障害のお子さんを対象としたグループキャンプもおすすめ
先ほども少し触れましたが、発達障害のお子さんを対象とするグループキャンプに参加するのもいいでしょう。支援員が多くいますから発達障害の子でも安心してキャンプ体験ができます。また、他の発達障害の子と触れ合うことで見えてくるものもあるかもしれません。
そして家族も一緒に参加可能なグループキャンプもあります。こちらは発達障害の子を持つ保護者の交流の場にもなります。悩みを共有したり、「我が家はこうしている」という情報を交換し合ったりすることができます。
ただし費用は比較的高め
ただし費用は比較的高い傾向にあり、本格的なグループキャンプの中には5万円以上かかるものもあります。
家族だけでキャンプをする場合は比較的低コストで済むはずですし、そもそも「少ない出費でできるレジャー」というのもキャンプの魅力です。まずは、高額を支払ってでもお子さんを参加させるメリットがあるか考えましょう。
まとめ
発達障害のお子さんと一緒にキャンプをする場合は様々なことに注意する必要があるものの、非日常の体験から得られるメリットは大きいです。親にとってもリフレッシュの機会になるでしょうから、長期休みのレジャーとして検討してみてはいかがでしょうか。
また、発達障害の方などを対象とするグループキャンプもありますので、興味があればこちらもチェックすることをおすすめします。