発達障害の子が自分で計算して「予算内の買い物」をするための3ステップ


株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では発達障害のお子さんが、自分で計算して予算内の買い物をするためのポイントなどについて解説していきます。
特に「単品での買い物はできる」「親が助ければ買い物できる」「そろそろ一人で買い物できるようにしてあげたい」という保護者の方におすすめの内容となっています。
本記事では、発達障害のお子さんが「予算内の買い物」に挑戦するべきタイミングの目安、予算内の買い物に挑戦するまでのステップ、買い物に向いているお店の条件などに関してお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
この条件をクリアしたら「予算内での買い物」に挑戦させましょう|発達障害ケア
発達障害のお子さんは以下のことができるようになったら、「一人で行う予算内での買い物(親がそばで見守る)」に挑戦させることをおすすめします。例えば「200円渡して、おやつを好きなだけ買わせる」などです。
100円ショップで複数個の買い物が一人でできたら「予算内の買い物」に挑戦!
100円ショップは金額計算がしやすいため「複数個の買い物」に初挑戦する場所としておすすめです。この100円ショップで買い物を、お子さん一人(+親の最低限のサポート付き)でこなせるようになったら、他のお店での「予算内の買い物」にも挑戦できるはずです。
発達障害のお子さんが一人で予算内の買い物ができるまでの3ステップ
続いては発達障害のお子さんが一人だけで「予算内の買い物」ができるようになるまでの3ステップを紹介していきます。
最初から自力だけで買い物をするのは困難ですから、段階的に取り組んでいくことをおすすめします。
1:まずは親が行う普段の買い物で「足し算・引き算」「妥協」「金銭感覚」を身に付けさせる
親がする普段の買い物の中で、「おおまかな足し算・引き算」「欲しいものについて妥協すること」「数百円レベルくらいの金銭感覚」を身に付けさせましょう。それぞれのポイントは以下の通りです。
- 足し算・引き算:「472円+541円は1000円程度」「35円の支払いに100円玉を使えば50円以上のおつり」など
- 妥協:「予算オーバーだから1個諦める」「予算オーバーだから一つ小さいサイズのお菓子にする」など
- 金銭感覚:「このレベルのお菓子なら50円以下」「○○なら100円台」「□□が200円以上は高い」など
普段から「何円くらいだと思う?」などのクイズを出す
もちろん親が買い物をしている様子を見るだけで金銭感覚などを身に付けることは難しいです。そのため「これは何円くらいだと思う?」「合計で何円くらいかな?」などとクイズを出すなどしてトレーニングしていくことをおすすめします。
また、買い物の手伝いをしてくれたり、手伝いはしなくてもついてきてくれたりした場合は「1個だけお菓子を選んでいいよ」「合計100円までお菓子を選んでいいよ」などと言って選ばせることで、決断や妥協をする力が身に付いていきます。
100円を超えた場合には「1個諦めようか」と言って妥協させたり、「この袋を持ってくれるなら全部買ってあげよう!」などと交渉力をつけさせたりすることも可能です。お子さんと買い物をしているといろいろな策が思い浮かぶはずですので、試してみてくださいね。
2:次に親のサポート付きで「予算内での買い物」ができるようにする
「おおまかな足し算・引き算力」「妥協力」「金銭感覚」が身に付いたら、親のサポート付きで予算内の買い物ができるようにしましょう。どの家庭でも用意するはずのオヤツの買い物をさせるのがおすすめです(自分で買って自分で食べるという意味でも)。
例えば100円玉を渡して「100円ピッタリ買えるかな?」というゲームをすればお子さんにとって買い物がより楽しいものになります。また「おおまかな計算力」が「正確な計算力」へと徐々にパワーアップしていくことでしょう。
そして繰り返しになりますが100円を超えたら1個妥協させたり、家の手伝いなどと引き換えに全部買ったりします。また、計算が苦手な子はいますので、予算オーバーを繰り返すことがあっても責めるのは厳禁です。むしろ「惜しいね!」などフォローするのが大事です。
3:最後は一人で「予算内の買い物」ができるようにする(親は見守る)
お子さんに「買い物には予算がある」「好きなものも全部は買えない」などの感覚が身に付いたら、いよいよ一人で予算内の買い物に挑戦できる時期です。ただ、もちろん最初のうちは親が見守ることをおすすめします(見守るだけで極力助けません)。
お子さん用の財布を用意し、買い物メモと電卓も準備しましょう。買い物メモには買う物リストや、欲しい商品がなかったらどうするかなどを丁寧に書きます。大人の目線ではなく、お子さんの目線で買い物メモを作ることが大事です。
そして親が見守りつつ買い物をします。何回か問題なく買い物ができたら、親の付き添いもなしでの買い物にもチャレンジしてみましょう。
発達障害のお子さんが予算内の買い物に挑戦する際に向いているお店の条件2つ
続いて発達障害のお子さんが予算内の買い物にチャレンジするときにおすすめのお店の条件を2つ紹介します。逆に予算内の買い物初挑戦に向かないお店もありますので注意が必要です。
1:親子で通い慣れていて顔なじみの個人商店
親子で通い慣れていてある程度顔が効く個人商店がおすすめです。「小さいうちから親子で通っていて、親子ともに顔が知られている」という状態が理想。お子さんが買い物にとまどったり、トラブルを起こしそうになったりしてもフォローしてくれる可能性が高いです。
逆に店員が激しく入れ替われるチェーンのスーパーなどは、発達障害のお子さんの予算内の買い物初挑戦には向きません。「お子さん個人」を認識しない場合が多くフォローもされず、慣れていない新人の店員さんにあたれば冷たい態度を取られることも考えられます。
もちろん店員さんに全く責任はないのですが、お子さんからすれば「店員さんは怖い」「買い物は怖い」という印象だけが残り、買い物自体を嫌になってしまってもおかしくありません。
2:徒歩圏内のお店
公共交通機関や親の車で移動するとなるとそれだけでエネルギーを使いますから、発達障害のお子さんにとっては特に厳しい買い物になってしまいます。そのためできるだけ徒歩だけで行けるお店を選びましょう。
お住まいの場所によっては「近所に顔なじみの店がない」というケースもあると思いますが、そういった場合はできるだけ親の車だけで移動するべきです。
短距離・短時間であっても公共交通機関には「見知らぬ他の乗客」もいるため、お子さんにとってストレスになる可能性があります。
まとめ
発達障害のお子さんに100円ショップで複数個の買い物ができるレベルの経験値、そして「足し算・引き算力」「妥協力」「金銭感覚」が身に付いたら、「一人での予算内の買い物」にチャレンジしても良い時期です。
もちろん失敗したりトラブルを起こしたりすることもあると思いますが、「できた部分」に注目して目一杯褒めてあげましょう。すると自己肯定感と次へのモチベーションがアップします。