発達障害の子が一人で外食できるまでの5ステップ


株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では発達障害のお子さんが一人で外食できるようになるための方法などについてお伝えしていきます。
「あまり親が補助をせずに一人で外食できるようになってくれると助かる」「将来のためにも一人で外食できるようになってほしい」とお考えの方は多いと思います。
そこで本記事では、発達障害のお子さんの一人での外食に向いているお店、外食できるまでのステップ、一人で外食できるようになるためのポイントなどに関して解説していきます。
発達障害のお子さんが外食に慣れるためにはファストフードがおすすめ
発達障害のお子さんが外食に慣れて、最終的に一人だけで外食できるようになるための練習場所としてはファストフード店がおすすめです。主な理由は以下の通りです。
- 「待つストレス」がない
- かしこまった雰囲気がなく注文しやすい
- 親としても教えやすい
特にマクドナルドなどは子ども向けメニューも充実していますし、多くのお子さんが好む味付けがされていますから無難です。
お子さんの好き嫌い(味覚過敏)や親の方針によっては別の店も検討する
もちろんお子さんの好き嫌いや親の方針によっては、ファストフード店ではないお店も検討しましょう。特に発達障害のお子さんの中には味覚過敏の子も少なくなく、ファストフード店に多い、濃い目の味付けを苦手とする子もいるかもしれません。
親の方針に関しては、例えば「糖質を抑える」「オーガニック食品だけ食べさせる」など、こだわるほどにお店選びのハードルが上がりますので気を付けてください。毎日外食するわけではないでしょうから、ある程度妥協することも必要です。
発達障害のお子さんが一人で外食できるようになるまでの5ステップ
それでは発達障害のお子さんが一人だけで外食できるようになるまでのステップを紹介します。発達障害であってもなくても最初から一人で外食できる子はいません。段階分けを意識してじっくりサポートしていくことが大事です。
ステップ1:まずは親と一緒に注文(食べたいメニューを言えるようにする)
まずは親と一緒に注文して食べたいメニューを言えるようにしていきましょう。この段階ではお金の払い方などはあまり気にしなくていいので、とにかく自分の分を注文できるようにします。
メニュー表が読めない、もしくは声を出して注文することに抵抗がある段階では、食べたいメニューを指差すだけでも構いません。
ステップ2:メニューを決めてから並ぶようにする(注文は親がする)
最初のうちは、「並んでレジに着いてから食べたいもの選ぶ」でも構いませんが、それができたら次は「食べたいものを選んでからレジに並ぶ」ことができるようにしていきましょう。また、「500円までね」などと予算も伝えて、収まるように選んでもらいます。
あくまでお子さん自身で選ぶことが大事ですので、「アイスクリームを2つ」などの極端な注文や「辛いメニューであり食べられない」などを除き、親はあまり口を出さないことをおすすめします。
ステップ3:メニューを決めてから並び、お子さん自身で注文する(親は補助程度)
「メニューを決めてから並ぶ」ことができるようになったら、注文もお子さん自身でできるように導いていきます。
特に発達障害のお子さんはあいまいなことを苦手とする傾向にあります。そのため「食べたいものを言えば大丈夫だよ」ではなく、「ハンバーガーとポテトのSサイズをください、って言うんだよ」など具体的に教えることが大事です。
順番が来たらお子さん自身で注文させますが、セリフが出てこない場合は、親がささやいてサポート。それでも言えない場合は親が「食べたいものを指差そうね」と言い、メニュー表を指で差させます。店員さんが「○○ですか?」と聞いてくるので、うなずかせましょう。
ステップ4:慣れてきたら店員さんの「繰り返し確認」に対応できるようにする
注文すると店員さんから「○○と□□でよろしいでしょうか?」などと繰り返し確認が入ります。最初のうちは親が対応して構いませんが、慣れてきたらお子さん自身に対応させましょう。
基本的に「はい」と言うか、うなずくだけで良いですが、イレギュラーで「売り切れです」「お時間いただきますがよろしいですか?」などと言われる可能性もあります。なので事前にお子さんに「こう言われたら、こう返す」としっかり教えておきましょう。
ただ発達障害のお子さんの中には感覚が過敏な方も多く、それにより騒がしい店内で店員さんの言葉を聞き取ることがなかなかできない子もいます。なので適度に親がフォローしつつ、焦らず徐々に慣れされていくことが大事です。
ステップ5:最終的にはお金も自分で支払い、おつりをもらえるようにする
最終的にはお子さん自身でお金を払い、おつりももらえるようにします。ポイントは「お金を払ってから、商品を受け取る」という順番を教えて徹底させることです。
商品を先に受け取るとおつりやレシートを財布に入れにくくなりますし、何よりお金を払う前に先に商品を受け取ろうとすると、お店によっては店員さんに厳しく注意される可能性もあります(もちろん店員さんに責任はありません)。
発達障害のお子さんが一人で外食できるようにするための3つのポイント
続いては発達障害のお子さんが一人で外食できるようになるためのポイントを3つ挙げます。先に紹介した5ステップを踏まえてお読みくださいね。
1:5ステップはあくまで参考、調整しながら慣れていきましょう
先ほど解説した5ステップはあくまで参考であり、紹介した順にお子さんが成長するとは限りません。また、発達障害であってもなくても、以前できていたことが急にできなくなることはあり得ます。
そのため親が「どうすれば上達しやすいか」「どうすれば得意分野が伸びるか」などを常に考えてコントロールしてあげることが大事です。
例えば計算が得意であれば最初から一人での支払いに挑戦させてもいいですし、店員さんとのコミュニケーションを苦手にしている場合は他の部分から取り組ませる選択肢もあります。
2:うまくいってもいかなくても必ず褒める
例えば親が9割サポートしたり、店員さんとのやり取りでお子さんが途中でギブアップしたりしても、必ず「ちゃんと買えたね!」「しっかり並べたね!」などと褒めましょう。するとお子さんの自信がアップします。
逆に「今度はもっと自分で頑張ろうね」「詰まってもいいから次は店員さんとちゃんとお話ししようね」などの反省(指摘)はしない方がいいです。モチベーションが下がりますし、「外食は怒られるイベント」というネガティブな学習をする可能性もあります。
3:できるだけ店内で食べる
ファストフード店の場合はテイクアウトできることが多いですが、できるだけ店内で食べることをおすすめします。店内という非日常的空間ですぐに食べることにより、お子さんにとって外食がより楽しいものになるからです。
また、すべての飲食店でテイクアウトできるわけではありませんから、早めに店内での食事に慣れておくという意味合いもあります。もちろん安定して店内で落ち着いて食べられるようになったら、それ以降はテイクアウトしてもしなくても構いません。
まとめ
発達障害のお子さんにとって一人で外食することのハードルは高くなりやすいですが、段階的に慣れていくことによって、いずれは一人だけでも外で食事できるようになることでしょう。
将来的にも一人で外食するスキルは身に付けておきたいところですから、親子で楽しみながらトレーニングしていくことをおすすめします。お子さんにはトレーニングと気付かせないことが大事です。