発達障害の子が数感覚を習得するための4つの方法


株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では発達障害のお子さんが数感覚を身に付けるための方法などについて解説していきます。
「まずは物の数を数えられるようにしてあげたい」「小学生に入ってから算数の授業でお手上げにならないようにしたい」とお考えの方は、お子さんに数感覚を習得させることをおすすめします。
本記事では、そもそも数感覚とは何かということも含め、発達障害のお子さんが数感覚を身に付けるための方法などに関してお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
算数の習得・上達に必要な数感覚とは?|発達障害ケア
「数感覚」とは、「物の個数と数字の関係性を、実感している感覚」のことです。例えば「チョコレートが3枚」と言われて何も考えなくても3つのチョコレートが思い浮かぶ感覚、4枚のカードを見て自然と「4枚だな」と思い浮かぶ感覚などのことを指します。
この数感覚がないままでは、例えば「2+4」の計算をする場合に、「2の次が3、3の次は4……」などと地道にカウントすることになる可能性が高いです。ですが数感覚が身についていれば自然と「6」という数字が思い浮かびます。
できるだけ早めに数感覚を身に付けて学校の算数に備えましょう
発達障害のお子さんが小学校に入ると、各教科の勉強に限らず学校生活においても苦労する可能性が高いです。しかし数感覚が身に付いていれば、算数については少し楽にスタートできます。
また、クラスメイトと何かを分担したり、宿題をこなす計画を立てたりするなど、算数が必要になる場面は授業以外でも意外と多いです(前者なら5人の班で2つずつ仕事を受け持つ、後者なら宿題を4分割して休憩しながら取り組むなど)。
発達障害のお子さんが効率良く数感覚を身に付けるための4つの方法
それでは発達障害のお子さんが効率良く数感覚を身に付けるための方法をいくつか紹介していきます。いずれも「家庭だからこそ」に重点を置いた方法となっていますので、親子で楽しみながら取り組んでいただければと思います。
1:おはじきカウントゲーム
箱の中に手を入れておはじきを掴み、取り出したおはじきの枚数を予想します(「何枚かな?」と親が声掛けしてあげるといいでしょう)。そしてお子さんと一緒に声を出しながら、おはじきの枚数を実際に数えます。これで「数字と個数の関係」を身に付けることができます。
小学生になり算数がある程度上達してきたら、硬貨で挑戦してみましょう。同じく箱の中に入れて硬貨をつかみ金額を予想しますが、硬貨は何種類かあるので予想の難易度が上がって楽しいです。また、カウントも難しくなるので計算のトレーニングとしておすすめです。
ちなみにこのゲームはお子さんの指先の動きの訓練にもなりますから、不器用な傾向にある発達障害の方には特に向いています。
2:硬貨の両替え遊び
コインケース(100円ショップなどにあります)を使った遊びであり、1円玉が10枚貯まったら10円玉に、10円玉が10枚貯まったら100円玉に、などと両替えします。逆に10円玉を1円玉10枚に、などという遊びをするのもいいでしょう。
両替え遊びで「10でひとかたまり」という感覚を身に付けておくと、算数の授業で繰り上がり・繰り下がりを習ったときに対応しやすくなります。
両替遊びだけをしている段階では例えば「9+3」の計算はできないかもしれません。しかしいざ繰り上がりを習ったら比較的早く、「10でひとかたまりだから残りは2」「10と2で、12」などとスムーズに計算できるようになる可能性が高いです。
3:食べ物を分ける
例えば日常的にこのようなことをします。
- 「何個欲しい?」と聞いて言われた個数のチョコを数えながら口に入れていく
- ケーキなどを人数分に切り分けさせる
- 複数枚のクッキーを家族で分けさせる(余りの扱いも考えさせる)
味覚・視覚をフル活用して数感覚を鍛えることができるため高効率です。また「食」は生活に直結し、お子さんも「できないといけない!」という気持ちになるため学びの濃度が上がりやすいです(アメリカに住むと話さざるを得ないため英語が上達することと似ています)。
4:指や手など身体を使った遊び
身体の感覚や触覚と数感覚を結び付けるためには、例えば以下の遊びがおすすめです。
- 「何回タッチしたでしょう?」と言ってから背中などを複数回タッチして数えさせる
- 「3歳!」と言いつつ指を4本立てたら「1、2、3、4」と数えつつ指を触り間違いに気付かせる
- お風呂で10数えたら「ドーン」と言いつつお子さんの身体を持ち上げる
紙の上の数字だけでは理解しにくいことも、体験させるとわかりやすくなります。
まとめ
発達障害のお子さんが算数の授業で困らないように、できるだけ早いうちから「数感覚」を身に付けさせることが大事です。これは単に足し算・引き算などを教え込むこととは異なる話ですので気を付けてください。
ただ、あまり難しく考える必要はなく、親が日常的に「数が関係する遊びができないか」と考えて、お子さんと一緒に楽しみながら実践すれば十分です。