発達障害の方を効果的にサポートできる「視覚化」「見える化」のコツ
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では発達障害のお子さんをサポートするための「視覚化」「見える化」について解説します。
お子さんになかなか言うことを聞かせることができず困っている方は少なくないと思います。もっと効率よく、楽しく物事を理解させることはできないだろうかと感じている人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、具体例を交えて発達障害のお子さんを支援するための「視覚化」「見える化」についてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
発達障害のお子さんには「視覚化」「見える化」で伝わりやすくなる
子ども全般に言えることではありますが、特に発達障害のお子さんの場合、「食事中は座ろうね」などの簡単な内容のルールであっても、何回言われてもその通りに振る舞えないケースがあります。
さて、発達障害であるかないかに限らず、子どもには「視覚情報(目で見る情報)」の方が受け入れやすい人と、「聴覚情報(耳で聞く情報)」の方が受け入れやすいタイプの人がいます。
そして前者については一般的に「人の話を聞かない」とみなされやすいですが、視覚化するだけですぐに理解できる可能性があります。
例えば「食事中は座ろうね」というのは「声」であり目に見えない情報ですが、「イスに座って食事をしているイラスト」は目に見える情報ですから、スムーズにわかってくれるかもしれません。
また、聴覚情報の方がわかりやすい子の場合、「声」などの色々な聴覚情報を受け取りすぎて何が重要な情報なのか理解できなくなるケースがあります。
例えば「食事中は座ろうね」と言われても、その際に他の人の声や物音が聞こえていると理解できないかもしれません。また、理解する前に他の声(例:まあとりあえず食べなさい)などが聞こえて、「座る?食べる?あれ?あれ?どうすればいいんだろう?」などと混乱してしまうケースがあります。
しかしこれについても「イスに座って食事をしているイラスト」を見せることで安心でき、何をすればいいのか自分の中で整理できる場合が多いです。
工夫をすれば伝わりやすくなります。まずは親がそれを信じて、楽しみながらサポートしていきましょう。
発達障害のお子さんに対して「視覚化」「見える化」する際のポイント4つ
ここまではイラストの話をしてきましたが、「すわろう」という文字を見せても構いませんし写真でもOKです。自由な発想で考えましょう。
ただ、発達障害のお子さんに対して文字・イラスト・写真で伝えることに関する注意点もあります。
1:シンプルな文字・イラスト・写真がおすすめ
複雑であったり書き込み(描き込み)が多かったりする文字・イラスト・写真を見せると、わかりにくくなってしまいます(大人が見てもわかりにくくなることでしょう)。そのためできる限りシンプルに見せることをおすすめします。
例えば「座って食事をしよう」と伝えたい場合、
- 文字で伝えるなら→「すわる」という文字だけ見せる
- イラストで伝えるなら→棒人間がイスに座っているイラストを見せる
- 写真で伝えるなら→座っている人の写真を見せる(食事風景や食べ物は写っていない方がわかりやすい)
などにするといいでしょう。
2:「視覚化」「見える化」されるからこそネガティブな表現は避ける
言葉として聞かせる場合、少しくらいネガティブな表現になっても形として残りませんので、お子さんはそれほど傷つかないかもしれません。しかし文字として残すとなるとずっと残りますから、これまで平気だった表現でも「見える化」によって逆にダメージを受けるかもしれません。
例えば「トイレはキレイに使うこと!」と書いたとすると、文字列から威圧的な雰囲気を感じますし、「僕は・私は普段トイレをキレイに使うことができていないんだ……」と必要以上に落ち込んでしまう可能性があります。
3:ポジティブかつ具体的な表現で書く
だからこそポジティブかつ具体的な表現で書くことが大事です。例えばトイレをキレイに使わせたいのであれば、
「座ってトイレをしてるから、ずーっとキレイだね♪」
などと書けば「座ればいいんだ」とするべき行動が明確にわかりますし、「ずーっとキレイ」というメリットも伝わります。
4:お子さんにとってわかりやすく書く
例えば「座ってトイレをすれば飛沫が飛ばなくて綺麗だね」などと書いてしまうと、お子さんが発達障害であるかどうかに関係なくわかりにくいといえます。
お子さんがある程度の年齢であるとしても、「少し考えないと理解しにくい表現」は避けるべきです。
「大人の感覚」で考えることはやめて、お子さんにとってわかりやすい表現を使うことを心がけましょう。
発達障害のお子さんに対する「抽象的かつネガティブ」な視覚化・見える化は厳禁
例えば以下の文章からどのような印象を受けるでしょうか。
「おっちょこちょいを直そう!」
このように「抽象的かつネガティブな表現」を使ってしまうと、「行動」ではなく、「その人自体」の否定になるような表現は絶対に厳禁です。会社で例えるのであれば、上司に「お前は本当に気が利かないな」と言われているようなものです。
「おっちょこちょいを直そう!」と言葉で言うだけであればまだしも、文字として残り続けると、お子さんにとっては常に否定され続ける感覚になってしまいます。
そのため内心では「おっちょこちょいを直させたい」と考えているのだとしても、
「座ってトイレをすれば、ずーっとキレイだね♪」
「水道をキチンとしめれば、お水を大切にできるね♪」
など、それぞれの行動についてポジティブに言及することが大事です。
まとめ
発達障害のお子さんをサポートするための「視覚化」「見える化」について解説しました。言葉で何回伝えても入りにくい内容であっても、イラスト・文字・写真などを使えばスムーズに理解できる可能性があります。
ただ、印象に残る・ずっと残るからこそネガティブな表現はしないように気を付けましょう。特に発達障害の場合、心に大きなダメージを受けるかもしれませんから注意が必要です。