発達障害の子の疲れ・心の痛みを 「見える化」でケアする
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では発達障害のお子さんの疲れや心の痛みを「見える化」によってケアする方法などについてお伝えしていきます。
「自分の疲れに無頓着でクタクタになるまで動き続ける」「自分と他人の心の痛みに鈍くて、いつか大変なことが起きそう」と心配している方は少なくないと思います。
そこで本記事では、疲れを見える化してケアする方法、そして心の痛みを見える化してケアする方法に関して、それぞれ解説していきますのでぜひ参考にしてください。別々に説明していますが似ている部分も多いです。
疲れの「見える化」でケアするための4つのポイント|発達障害ケア
まずは発達障害の子の疲れを「見える化」してケアする方法を紹介します。
1:「疲れのサイン」を知っておく
ほとんどの人に「疲れてくるとこうなる」というサインがあります。例えば以下の通りです。
- お腹を壊す
- 食欲が落ちる
- 一重まぶたが二重気味になる
- 肌のかゆみが増える
- 音が大きく聞こえる
特に発達障害の場合は自分自身の変化に気付きにくい場合があるため、食欲低下、一重まぶたが二重気味になるなどの「周りから見ても分かる変化」を親も知っておくことが大事です。
2:「疲れが溜まる行動」を控えめにする
疲れのサインを知ることに比べると線引きが難しいですが、「疲れが溜まる行動」を控えめにすることも、お子さんの疲れをケアするためには大事です。例えば以下の通りです。
- 行楽などでも車移動を少なめにする
- 人通りの多いルートは避けて移動する
- 短い移動でも寒ければ厚着をする
もちろん「疲れが溜まる行動は何か」は人によって違いますので、これまでお子さんと過ごしてきた経験をもとに見極めていただければと思います。
3:「疲れのサイン」が見え始めたら休む
疲れが溜まる行動を控えめにしつつも「1」で紹介したような疲れのサインが出たら、できる限り休息を取りましょう。お子さんが「休みたくない!」と言うかもしれませんが、そういった場合も例えば以下のような論理的な説明で納得させやすいです。
- ○○君は疲れるとまぶたが二重になりやすいんだよ
- 今、まぶたが二重になっているから休んだ方がいいよ
- 休まないと身体を壊して楽しめなくなるかもしれないよ
- しっかり休んだらまた遊んで(学校に行って、習い事に行って……etcetc)いいよ
4:学校などにも「疲れのサイン」を伝えておく
学校などにもお子さんの「疲れのサイン」を伝えておき、例えば「サインが出たら体育は休ませていただけますでしょうか?」「サインが出たら保健室で少し休ませていただけますでしょうか?」などと言っておくと、学校としても助かる場合が多いです。
また、療育施設や医療機関などにも、必要に応じて疲れのサインについて伝えておくといいでしょう。
心の痛みを「見える化」してケアするための3つのポイント|発達障害ケア
続いては心の痛みを「見える化」してケアするためのポイントを挙げていきます。
1:心の痛みをHP(ヒットポイント)などで捉える
特にお子さんがテレビゲームなどを好む場合は、「心の痛み=HP(ヒットポイント、体力)へのダメージ」と捉えると分かりやすいかもしれません。例えば以下の通りです。
- 親「今日、病院で待たされると思うけどダメージはどれくらいになりそう?」
- 子「う~ん。30%くらいかな」
- 親「じゃあ、帰りにオヤツを買っていこうか。それでHP回復できるかな?」
- 子「できそう!」
というふうに楽しみながら心の痛みやストレスを数値化することで、お子さん自身が「自分が負っている・負いそうなダメージ」を理解しやすくなります。また、何より楽しむことによって、痛みやストレスそのものを下げる効果も期待できます。
2:HPを回復させる方法を用意する
先述の「帰りにオヤツを買っていく」など、受けたダメージを回復できる方法を用意することが大切です。最初のうちは親が用意することになると思いますが、お子さんが慣れたり成長したりすれば自分自身でも用意できるようになることでしょう。
3:親も受けたダメージをお子さんにHPで示す
例えば親がお子さんにちょっとした悪口を言われた場合は、「お母さん、今の言葉で30%くらいのダメージを受けたよ」などと言うことで、お子さんは「悪いことをしてしまったこと」「どれくらい悪いことだったのか」を理解しやすくなります。
ただ、どこか「気楽さ」「おふざけ感」が入る方法ですので、お子さんが見過ごせない暴言・暴力などをした場合はきちんと注意することをおすすめします。
まとめ
特に発達障害のお子さんの、疲れ・心の痛みなど「本来目に見えないもの」を理解・ケアするためには、今回紹介したような少し強引な方法であっても「見える化」をすることが大事です。
それによってお子さん自身が「自分の疲れ・心の痛みなどを(たとえ多少でも)理解できる」という状態になれば、「疲れや心の痛み自体への恐怖」も少し薄れていくかもしれません。