発達障害のお子さんが「おやつ」で楽しく学ぶためのポイントや注意点
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちら発達障害のお子さんに日々「おやつ」を与える中で、「あまり考えずに食べさせているけれど、これでいいのだろうか」と悩んでいる親は少なくないと思います。
発達障害の方にとっておやつは学びの機会になりやすいです。そこでこの記事では、発達障害のお子さんがおやつから得られる学びや、おやつを与える際のポイントなどについて解説していきます。
発達障害のお子さんにとっておやつが学びのチャンスになりやすい理由
発達障害の人の中には、好きなことに対してかなりの集中力を発揮する方が少なくありません。そして多くのお子さんにとっておやつは楽しみ(好きなこと)ですから、親がおやつを「学びの機会」ととらえて工夫するのは理にかなっています。
もちろんできる範囲で構いませんし、「おやつを楽しむこと」を一番の目的にするべきです。ですが、おやつの食べさせ方・おやつとの関わり方を見直すことで、お子さんが多くのものを得るかもしれません。
発達障害のお子さんがおやつから得やすい4つの学び
それでは発達障害のお子さんがおやつから学べることをいくつか紹介していきます。もちろん効率よく・効果的に学ばせるためには親のサポートが重要です。
1:作ること
料理は発達障害のお子さんにとって、簡単かつ効果的な療育となります。
ホットケーキなど難易度の高いおやつを作る必要はありません。ポップコーンやカキ氷など簡単なもの作ることも楽しいですし、「自分で食べるものを自分で作ることができた」という成功体験を積ませることもできます。
知育菓子(ねるねるねるねなど)で遊ばせてみるのもいいでしょう。
2:買うこと
例えば「お小遣いを渡して→スーパーなどに行かせて→お小遣いの範囲に収まるようにおやつを選ばせて→買わせる」という流れには多くの学びがあります。
おやつを自分で選ぶことによって簡単な計算をすることになりますし、店員さんと話すことで社交性やコミュニケーション能力も身に付けることができます。
発達障害であるかどうかにかかわらず、内気なお子さんであっても、好きなおやつのためならと店員さんに「いくらですか?」などと話しかけられるケースが少なくありません。もちろんお子さんが小さいうちは親も店についていく必要がありますが、成長するにつれて一人で買い物できるようになっていきます。
また、計算ができない段階であっても、「ここにあるものを3個まで買っていいよ」などと言えば、「制限がある中で何かを選ぶこと」のトレーニングをすることができます。
おやつもインターネットで購入できる世の中ですし、親が食料品の買い出しのついでに買う家庭も多いでしょうが、できる限り「お子さんがおやつを買う機会」を作ることをおすすめします。
3:数えること
おやつは「数量感覚」「数える能力」などを身に付けるためのチャンスでもあります。身に付けさせるためには、
- 見せる
- 触れさせる
- 味わわせる
この3点が大事とされています。そうすることで「数」と「モノ」が一致する感覚を得ることができるためです。
例えば
- 「この中から2つ選んでいいよ」と言っておやつを5つ見せる
- 「3枚だからね」と言って袋からおせんべいを3枚取らせる
- 取ったものを味わわせる(これについては自然とそうなりますが)
などが該当します。
ちなみに数がまだわからない段階のお子さんに数を教える場合、親が「指をその都度折って、数を口に出して言う」のが有効です。
こうすることで数を理解するためのベースが構築されて、あるときお子さんの中で、「モノの数」と「対応する数字」がつながるようになります(例:チョコが4つ並んでいる様子を見るたけで、「4」と感覚的に理解できる)。
ただ、「親が、小皿に適量乗せた煮干し」などをおやつに出すと、あまり数的感覚・数える能力が身に付かないかもしれません。
煮干しなどの「数えにくいもの」をおやつにする場合は、お子さんに「食べたい量(食べていいと思える量)」を取らせることをおすすめします。こうすれば「分量に関する感覚」を身に付けることができます。
4:分けること
親、兄弟姉妹、友達などとおやつを分けることが、社会性を身につけるトレーニングの一環になります。
まずは「同じおやつを同じ数ずつ、平等に分けられるようになる」べきですが、それができるようになったら
- 好きなものは多めにもらい、他のおやつでバランスを取る
- 自分のお小遣いで買ったおやつなので、他の人には少しだけ分ける
- 奇数のものを二人で分けるので、余る一つの扱いを決める(じゃんけん、前回は自分がもらったので今回は譲る、など)
などの考え方もできるようになっていきます。もちろん同じ数ずつ分けることで、納得できる場合はそれでOKです。
お子さんに考えさせることが大事ですから、あまり口を挟み過ぎないようにしましょう。また、当人たちが納得しているのであれば、親の立場で疑問に感じても「考え直してみようか?」などと声をかけることもしません。
ただし例えば、
- 兄や姉が脅したり、言いくるめたりするような形で多くおやつをもらっている
- 自己犠牲精神が強すぎて、いつもおやつを譲っている
- 泣き脅しに近い形で、多くおやつをもらっている
などの状況にある場合は、「本当にそれでいいの?」などと声をかけるべきでしょう。
発達障害のお子さんがおやつを食べたがらない場合はそれでOK
発達障害であるかどうかにかかわらず、おやつを食べたがらない、おやつに興味のないようなお子さんも稀にいます。その場合、無理におやつを食べさせる必要はないとされています。
逆の「おやつばかり食べたがり、普通の食事を食べたがらない」のは問題ですが、おやつを食べないのは基本的にOKです。
ただ、「おやつという文化」に触れずに育つのも極端ですから、たまに「食べてみる?美味しいよ?」と促してみたり、親がおやつを食べているところを見せたりするといいでしょう。
また、お子さんが6~10歳くらいになるまでは、おやつによって栄養分を補う家庭も少なくありません。3食だけでは栄養が不足すると感じる場合は、「おやつ」ではなく、「補食」という感覚で、適度に間食を与えることも検討しましょう。
まとめ
特に発達障害のお子さんにとって、おやつは学びの宝庫であるといえます。作る、買う、数える、分けるなどの行為を通じて、いろいろと学ばせることを意識しましょう。
ただ、学ばせることばかり考えていると、おやつの時間が窮屈なものになるかもしれません。そのためおやつを親子共に楽しむことを第一にしつつ、無理のない範囲で学びにつなげることをおすすめします。