発達障害のお子さんに多い「睡眠障害」への対策法
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では、睡眠障害を抱える発達障害のお子さんを寝かせるためのポイントについて解説します。
「夜、なかなか眠らなくて困っている」「子どもの睡眠の世話によって、自分が疲弊している」という親は多いと思います。
そこで本記事では、睡眠障害を抱える発達障害のお子さんをケアするためのコツや、子どもをサポートする親が持つべき心構えなどについてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
発達障害のお子さんの約5割が睡眠障害に陥っている
発達障害のお子さんの約5割が、なかなか寝つけない、中途覚醒しやすい、中途覚醒するとそのあと眠れなくなる、少しの物音で起きてしまうなどの「睡眠障害」を抱えていると言われています。
睡眠障害を抱える発達障害のお子さんを寝かしつけるためのポイント5つ
それでは睡眠障害を抱えている発達障害のお子さんを寝かせるためのポイントを紹介していきます。
1:光や物音をできるだけ遮断する
発達障害のお子さんは光や物音などの刺激に敏感な傾向にあります。そのため以下の工夫をすることをおすすめします。
- 遮光カーテンで光をシャットアウトする
- 緑色や青色など寒色系の寝具を使う
- 柔らかい寝具を使う
- 室温にも気を遣う
- 隣の部屋であってもテレビは消す
また、近くに玩具があると遊びたくなるかもしれませんから、お子さんが眠る部屋には遊び道具を置かない方がいいでしょう。
2:母親が一緒に寝て安心できる環境にする
特に赤ちゃんのうちは「外からの情報」が多すぎて不安を抱えていますから、お母さんが一緒に眠ることをおすすめします。母親が抱っこすることでほっとして、お子さんは「この世界は安心できる」と理解していきます。
お子さんがある程度の年齢になっても、母親が近くにいることで安心するお子さんは多いです。
ただ、母親にいびきや歯ぎしりがあると、それによってお子さんが起きてしまうかもしれません。そのため、いびきについては耳鼻科、歯ぎしりについては歯科医院で相談してケアしていくことをおすすめします。
3:体内のリズムを安定させる
- 朝:できる限り毎日同じ時間に起きて日光を浴びる→14~15時間後に睡眠ホルモンのメラトニンが分泌される
- 日中:元気に動いてエネルギーを使う
- 夜:入眠の1時間ほど前に入浴する(体温が下がるにつれて眠くなる)
このように体内のリズムを整えることで、睡眠障害のお子さんでも夜に寝つきやすくなるかもしれません。
4:寝る直前に行う儀式を作る
- 入眠の1時間前に入浴する
- 寝る前に1冊絵本を読む
- ゆったりした曲を聞かせる
- 寝る直前にトイレに行く
など、リラックスできる「入眠の儀式」を作ることで、それが「寝るための習慣」になり、入眠しやすくなる場合もあります。
ただ、例えばホットミルクを飲むなど、水分を取るのはおすすめしません。寝ついてからトイレに起きたり、尿意のある状態が続いて眠りが浅くなったりする可能性があるためです。
5:無理に寝かせようとしない
また、無理に寝かせようとするべきではありません。親が焦ると、敏感なお子さんはそれを察知して、お子さんも焦り、余計に眠れなくなる可能性があるからです。
どうしても入眠しないのであれば一回電気をつけて、ゆったりした音楽を聞かせたり、絵本を読んだりするなど、お子さんがリラックスできることをしてあげましょう。すると気持ちが切り替わり、眠くなるかもしれません。
発達障害のお子さんが眠れなくても焦らない。親が元気でいることも大事
睡眠障害によって慢性的な寝不足が続いているのであれば一度病院で相談するべきですが、そこまでのレベルでないのであれば、お子さんが眠れない場合でもそれほど焦る必要はありません。
お子さんの睡眠時間にこだわり過ぎないようにすれば、親が家事をする時間も増えますし、お子さんのストレスが減ってむしろ眠りやすくなるかもしれません。
そしてお子さんが睡眠障害であっても、親は気を詰め過ぎずに元気でいることが大事です。「子どもが夜眠るために」ということだけを考えて生活していると、親の方が先に潰れてしまうかもしれません。
そのため隙があれば親も昼寝などをするべきですし、スマートフォンや漫画など「子どものそばにいながらストレスを解消できるもの」も用意しておくべきでしょう。
赤ちゃんを寝かせるならスリングがおすすめ
例えば「兄や姉が発達障害であり忙しいものの、赤ちゃんもいる」という場合は、スリング(たすき掛けでお子さんを包み込むことができる袋状の抱っこ紐)を使うと便利です。スリングによって赤ちゃんを抱っこすれば、兄や姉の幼稚園への送り迎えなどに赤ちゃんを連れていくこともできます。
また、泣き出した赤ちゃんをあやすときも、腕だけで抱っこするよりもスリングを使う方が負担は少なくなることでしょう。もちろん寝かしつけるためにも役立ちます。
まとめ
ここまで発達障害のお子さんが、睡眠障害などでなかなか眠れない状態にある場合の対策方法などについて解説しました。特に発達障害の方の場合、感覚過敏傾向がありますから、光や物音の対策から始めることをおすすめします。
ただ、慢性的な睡眠不足でないのであれば、たまに寝付きの悪い日があってもそれほど心配する必要はありません。親が心身共に元気であることも重要ですから、あまり根を詰めないようにしつつお子さんをケアしていくといいでしょう。