発達障害のお子さんと無理なく家族旅行を楽しむ秘訣
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちら発達障害のお子さんと家族旅行をすることを検討しているものの、「どうすればトラブルを起こすことなく楽しく旅行ができるのかわからない」と困っている親は少なくないと思います。
発達障害のお子さんと旅行を楽しむためには、「事前準備」と「旅行中の工夫」が大事です。
この記事では発達障害のお子さんと家族旅行をする際のポイントや、子どもの不安を和らげる方法などについて解説していきます。
発達障害のお子さんとの家族旅行は修学旅行の練習にもなる
「学校の修学旅行が人生初旅行」となると、特に発達障害のお子さんの場合はかなりとまどってしまうかもしれません。そこで「修学旅行の練習」と考えて、家族旅行をしておくのもいいでしょう。
行き場所はどこでも構いませんが、最初は日帰りできる近場から始めて、慣れてきたら宿泊を伴う旅行をするといいかもしれません。
発達障害のお子さんと旅行を楽しむためのポイント7つ
それでは発達障害のお子さん旅行をするためのポイントを紹介していきます。「事前準備」と「当日どう動くかの想定」ができていれば、あたふたしすぎず旅行を楽しむことができます。
1:小さな旅行でも「しおり」を作る
- 旅行の予定表(家を出てから~家に帰るまで細かく丁寧に)
- ルートを書いた地図
- 周辺施設
- 泊まる場所
- 旅行先ですること
などをイメージしやすい写真を、宿泊所のウェブサイトなどからダウンロードして「しおり」を作りましょう。
特に発達障害のお子さんの場合「見通しが立たないこと」が苦手な傾向にあるものの、しおりを作り込むことによって、事前にイメージして「見通しが立つこと」に変えてあげることができます。
お子さんが小さければしおりは全部親が作ることになりますが、ある程度成長しているのであればできる範囲で一緒に作りましょう(写真を貼るなど簡単なことをさせるだけでも構いません)。
2:予定が変更になる可能性もある(そうなっても大丈夫)と伝えておく
旅行中にいきなり予定が変更になるとお子さんがパニック状態に近くなるかもしれません。そのため以下のことをハッキリ伝えておくことが大事です。
- 予定が変わるかもしれない
- 予定通りにできなかった場合はどうするか(遅れても予定通りのアクティビティはする、何かアクティビティをスキップするなど)
- どうしていいかわからなくなっても親や周りの人が助けてくれる
特に3つ目をお子さんが理解することで安心して旅行に臨みやすくなります。逆に「何としてでも予定通りに進める。子どもに余計なことを言わない方がいい」などと考えていると旅行当日に何かトラブルがあった場合に対処し切れなくなる恐れがあります。
3:予定を詰め込みすぎない
とはいえ予定通りに進むに越したことはありませんから、予定を詰め込みすぎないようにしましょう。そうでないとお子さんが発達障害であってもなくても、最初の休憩所などに着いてすぐに「帰りたい」などと言ってくるかもしれません。
また、親としてもお子さんの世話をしながら旅行をすることになりますから工程に余裕がないとヘトヘトになってしまう可能性があります。
時間が余ったら休憩所などでゆっくりしたり、飲食店で少し長めにお子さんと話し込んだりすれば大丈夫です。非日常感も相まってお子さんもどんどん喋ってくれることでしょう。
4:気になっていることがないか聞き、対処方法をしおりに書いておく
しおりをおおよそ書き終えたら、お子さんに気になっていることがないか聞きます。そして一つひとつ対処方法などをしおりに書き込むことで、お子さんはさらに安心して旅行に行けるようになります。例えば以下の通りです。
- お家に帰れるの?→宿泊場所から歩いて駅に行って、電車に乗って、駅を降りたら、歩いてお家まで帰るから大丈夫だよ
- 旅行中はおやつを食べられるの?→お菓子を持っていくから大丈夫だよ
- 途中で疲れちゃったらどうするの?→計画を変更してホテルでゆっくりしても大丈夫だよ
など、親からすれば「そんなことが気になるの!?」とビックリするような質問もあるかもしれませんが、すべて丁寧に答えましょう。お子さんがイメージしやすいようにできるだけ具体的に答えるのがポイントです。
書き終えたらしおりを繰り返し親子一緒に読むことで、お子さんの不安がどんどん小さくなっていくでしょうし、もちろんワクワクも強くなっていくことでしょう。
5:「追いかける目印」を決める(親の背中など)
人の少ないところを旅行する場合はほとんど関係のないことですが、混雑する駅などを移動する場合は、親子で手をつないで歩くことが難しくなるかもしれませんから「何についていくか」を決めることをおすすめします。
例えば「母さんの背中についてくるんだよ」などと伝えておきます。
また、「まずはあそこの時計台の下まで進もうね」などと「短期的な目的地」を伝えておくのも有効です。
6:「○○しちゃダメ」ではなく「○○ならしていいよ」と指示する
否定形を受け入れにくい傾向にありますから、旅行中に限らず「○○しちゃダメ」ではなく、「○○しようね」「○○ならしていいよ」などと伝えることをおすすめします。例えば「ちょろちょろしないで!」ではなく、「お母さんのそばを歩こうね」などと言います。
また、否定形の表現は抽象的になりがちであり、一例として「ちょろちょろしないで」では具体的に何をすればいいのかわかりにくいです(発達障害の方は言葉の裏や空気を読むことが苦手な傾向にあります)。
一方、「お母さんのそばを歩こうね」という指示は具体的ですから、何をすればいいのかすぐに理解してくれます。
7:「家での休日」を一日挟んでから学校に行けるように日程を調整する
特に発達障害のお子さんの場合は、旅行などに非日常的なことによって疲れやすい傾向にありますから、「家での休日」を一日以上挟んでから学校に行けるように日程調整をすることをおすすめします(土曜日の夕方に帰宅するなど)。
また、発達障害の場合、自分自身の疲労に気付きにくい人もいます。
そのため「家での休日」にお子さんが外で遊びたがるなどしても、「旅行を頑張ったから疲れているんだよ。明日元気に学校に行くために今日はお家で休んで、パワーをためよう」と、ポジティブに休息をうながすといいでしょう。
まとめ
ここまで発達障害のお子さんと旅行をするためのポイントについて解説しました。発達障害の方は「見通しの立たないこと」があると不安になりやすいものの、しおりを作るなどしてしっかり準備すれば基本的に問題はありません。
旅行中は「追いかける目印を決める」「ポジティブで具体的な声掛けをする」などのことを心がけつつ、お子さんと一緒に旅行を満喫しましょう。