発達障害のお子さんの学校への行き渋りを防ぐためには?
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらここでは発達障害のお子さんの学校への行き渋り対策について解説します。
もちろんカバーはできるものの、一度お子さんが不登校になるとそこから復帰するのは難しくなりますし、親としても苦労することになる可能性が高いです。
そこで本記事では発達障害のお子さんの学校への行き渋りを「防止」する方法や、親としての心構えなどについてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
発達障害のお子さんが学校に行くだけで満点と考える|行き渋り対策の第一歩
発達障害のお子さんが学校に行く場合、例えば以下のことで苦労します。
- 教室内のザワザワ音
- 先生が誰かを叱る大きな声
- 自分に合わない勉強方法
- 周りの人に合わせなければならない
- 他のクラスメイトと柔軟に会話することを求められる
お子さんのことを明確に説明すれば、担任の先生は理解してくれるでしょう(もちろん先生によって理解度は変わりますが、完璧を求めるわけにもいきません)。しかし他のクラスメイトについては、お子さんの発達障害のことを一切理解しなくてもおかしくありません。
そのような中で何時間も過ごすのですから、お子さんにとってはかなりのハードルといえます。例えるのであれば花粉症の人がスギ林の中で過ごすようなもの、もしくは納豆が大嫌いな人が納豆に囲まれて過ごすようなものです。
ですから親としては、「行って帰ってくればそれで満点」と考えましょう。それが行き渋り対策の第一歩となります。
- 「授業中騒がないのよ」
- 「先生の話をよく聞くのよ」
- 「お友達と仲良くするのよ」
などとは言いません(お子さんが「どうすればいいのかな?」と聞いてきたときは答えましょう)。「行ってらっしゃい」と笑顔で送り出し、帰ってきたら「よく頑張ったね!」と全力で褒めてあげましょう。
発達障害のお子さんが学校への「強い行き渋り」を見せる時点で危険信号|「防止」が必要
発達障害のお子さんに限りませんが、実は「強い行き渋り」を見せる時点で、お子さんとしてはかなり思い詰めている可能性が高く、具体的にいうと「『学校に行く』という在り方を捨てたい」という段階に来ていてもおかしくありません。
本当にお子さんが学校に行きたがらないのであれば、学校を休ませて「学校に行かない理由」を優しく聞くことが大事です。そして理由が分かれば学校と相談することで、配慮してもらえる可能性があります(しかしあまり配慮してもらえない場合もあります)。
また、親が聞いても行き渋りの理由が分からないのであれば、(発達面を見てもらっているであろう)主治医の先生に「今子どもが学校を休んでいます。これからどうしていけばいいでしょうか?」と質問してみるのもいいでしょう。
ただ、現実として一度不登校になってから、復帰するのは発達障害であってもなくても簡単なことではありません。そのため親としては「行き渋りになったらどうにかする」のではなく、入学前に「行き渋りにならないように対策しておく」ことが大事です。
発達障害のお子さんが学校に行き渋らないようにするための5つの対策
それでは発達障害のお子さんが学校への行き渋りをしないようにするための5つの防止策を紹介していきます。
1:通学路を下見させておく
学校への道を覚えられるか不安、実際に覚えられない、覚えられても慣れない道であるため不安、というお子さんは少なくありません。そのため入学前に通学路を見学しておくのがおすすめです。
先輩方の集団登校があれば参加させてもらいましょう。集団登校がない、もしくは先輩方と歩くのが不安である場合は親と一緒に通学路を歩いてみます。
親と一緒に歩くのであれば「ここで曲がるね」などの声がけをしつつ、重要箇所の写真を撮っていきましょう。特に発達障害のお子さんの場合、例えば「コンビニ前の信号を右に曲がるよ」などと言葉で説明されるよりも、「(写真を見せて)ここを曲がるよ」とイメージで説明される方が理解しやすい傾向にあります。
お子さんが安心するまで何回でも写真を見せたり、実際に歩いたりしましょう。
また、「道がわからなくなったときの対処方法(指導員に聞くなど)」も教えておき、「見通しが立たないこと」をできるだけ潰しておくことも大事です。ちなみに学校が始まってからでも、指導員にあいさつをしておけば顔を覚えてくれます。
2:学校を下見する
通学路と同じ発想で学校も下見しておきたいところです。学校側に頼めば受け入れてくれる可能性が高いです。
教室、昇降口、体育館、トイレ、校庭などをお子さんに見せたり、ビデオに撮って繰り返し見せたりすることで、お子さんの「どのようなところなんだろう」という不安が薄れていきます。
3:担任の先生と2ショット写真を撮る
発達障害のお子さんに限りませんが、人の顔と名前を一致させることが苦手な子もいます。そういった場合は、入学式の後などに担任の先生と2ショット写真を撮らせてもらい、家の中の見えやすい場所に貼ることで早めに覚えることができます。
また、クラスメイトの集合写真を貼っておくのもいいでしょう。
そして時間があるときに「この子の名前は?」などと親が聞いてあげることをおすすめします。仲良くなっている子であれば「○○くんと一緒に遊んだときにね!」などと話してくれるかもしれません。
4:親も心配事があればできる限り解消しておく
親としても、お子さんが入学するにあたって心配事が多くなることでしょう。親は堂々としていたいところですから、近所の先輩ママや上級生の親に積極的に質問することをおすすめします。
例えば「傘を忘れて雨が降ってきた場合はどうするのか」「遅刻しそうな場合はどうするのか」「友達とケンカして一緒に登校しにくい場合はどうするのか」など、実際に経験していないとわかりにくいことまで教えてもらうことができるはずです。
近年はいわゆる「ご近所付き合い」も希薄になっているかもしれませんが、特にお子さんが発達障害である場合は他の保護者に配慮してもらう必要性も出てくる可能性がありますから、顔見知り程度にはなっておくべきです。
5:あとはお子さんの細かな不安(質問)を解消していく
入学の準備を進める中で、もしくは入学直後にはお子さんからの「○○はどうしよう?」「○○は大丈夫かな?」などの質問(不安)が出てくるでしょうから、逐一答えてお子さんの不安をできる限り解消してあげましょう。
ポイントは「解決方法を具体的に提示すること」です。
例えば「授業中にお腹が痛くなったらどうしよう?」と言われたら、「先生に言えば大丈夫だよ」だけでなく、「先生にトイレに行かせてもらうように頼もう。授業中でも行かせてくれるから安心してね。トイレに行っても治らなかったら保健室に行かせてもらおう」などとできる限り具体的に言います。
まとめ
ここまで発達障害のお子さんの学校への行き渋り対策について解説しました。発達障害の方に限らず一度不登校になると、そこから復帰する難易度は高くなります。そのため「行き渋ってから対策する」よりは、「行き渋らないように対策する」ことが大事です。
発達障害のお子さんは「見通しが立たないこと」が苦手な傾向にありますから、通学路や学校の中を下見したり、事前にお子さんの質問(不安)に答えておいたりするなどして、できる限りの対策をすることをおすすめします。