発達障害のお子さんにおすすめの「道具の工夫」
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では発達障害のお子さんにおすすめの「道具の工夫」について解説します。
「学校で使う一般的な道具に苦戦している」「決してできないわけではないのに、道具のせいで不利になっている気がする」と悩んでいる親は少なくないと思います。
そこで本記事では主に学校で使う道具について、発達障害の方でも使いやすくするための「道具の工夫」と、道具に対する基本的な考え方などについてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
道具に工夫を施せば発達障害のお子さんでも使いやすくなる
「発達障害の人向けの道具」もいろいろあるため可能な範囲で活用したいところです。しかし実際には「高額であり用意しにくい(何個も使わせるのが現実的に難しい)」「学校からの指定の道具がある」などの理由で、それらの道具を使えない・使いにくいケースも少なくありません。
そのため「普通の道具を改造して使いやすくする」、もしくは「『普通の道具』から大きく外れていない範囲で使いやすいものを選ぶ」という工夫をすることが大事です。
最初は親がやってあげればいいですが、お子さんの成長度合いによっては本人にもある程度考えさせて親子で実践することをおすすめします。やがてお子さん一人でも道具の工夫ができるようになれば、社会に出てからでも役立つ経験となります。
発達障害のお子さんにおすすめの道具の工夫11選
それでは発達障害のお子さんに向いている「道具の工夫方法」をいくつか紹介していきます。ここで挙げているもの以外の道具をカスタマイズする場合にも参考にしていただければ幸いです。
1:教科書の指定ページを開きやすくする工夫
何ページ目を指定されても1ページ目辺りからゆっくりめくっていく子もいれば、当てずっぽうのようにページを開いてしまいなかなか指定のページにたどり着くことができない子もいます。そして授業に置いていかれると先生の説明がわからなくなり、わからないままで進んでいくため、わからないことがどんどん増えていってしまいます。
そこでおすすめなのが教科書に「見出しシール(インデックスシール)」を貼ってページをわかりやすくするという方法です。例えば単元ごと、10ページごとなどに見出しシールを貼ることで、指定のページにすぐにたどりつきやすくなります。
お子さんが「教科書を目立たせなくない(他の子と同じ見た目のままにしたい)」というタイプの場合は、単元ごとの最初のページにカラーマーカーで目印をつけるだけでもかなりわかりやすくなります。
「見出しシールをつけるとかえってゴチャゴチャしてわかりにくくなるのでは」と感じるかもしれませんが、特に小学校の場合、教科書はそれほど厚くありませんから、見出しシールによってスッキリした印象になるケースがほとんどです。
2:鉛筆・鉛筆キャップを失くしにくくする工夫
鉛筆をよく失くす場合は、「5本持っていって、すべてに通し番号を付ける」といいでしょう。通し番号があることで「抜け」に気付きやすくなりますし、3、5、7などの奇数は数字として印象に残りやすいです。また、並べると絵柄になる鉛筆をセットで用意するのもおすすめです。
そして友達の鉛筆と間違えて持って帰ってきてしまうことが多い場合は、マスキングテープなどを使って「自分のもの」という目印を付けるといいでしょう。
「書く方」と逆の先端を少し削ってそこに名前を書く方法もあります(ただこのやり方は少しわかりにくいかもしれません)。
鉛筆のキャップを失くす人も少なくありませんが、丸型ではなく四角形・多角形のキャップにすれば転がりにくいので失くすリスクが減ります。ただ、発達障害であってもなくても鉛筆のキャップを失くす人はとても多いですから、そもそも鉛筆のキャップを持たせないことも検討しましょう(いらない道具は持たないという発想も必要です)。
「鉛筆ホルダーのある筆箱を使う」もしくは、「4B~Bくらいの折れにくい鉛筆を使う」などの工夫をすれば、キャップがなくてもあまり困りません。
3:筆記用具を管理しやすく失くしにくい筆箱・ペンケースを使う
先述の通り鉛筆ホルダーのある筆箱・ペンケースを使えば、鉛筆のキャップがなくても先端が折れにくいです。
また、透明の筆箱・ペンケースであれば筆記用具を雑にしまっても、中のものがすぐに確認できるため便利です。そしてチェックを閉め忘れても筆記用具が飛び出にくい筆箱・ペンケースを使うといいでしょう。
4:滑りにくい直定規・三角定規を使う
滑り止めの付いた直定規・三角定規であれば扱いやすいです。普通の直定規・三角定規でも裏側に修正テープを貼るなどして滑り止めにすることはできますが、気にして剥がしてしまう可能性もありますから、お子さんの性格を見ながら直定規・三角定規を選びましょう。
また、直定規・三角定規に限りませんが、道具が大きすぎると管理しにくくなりますから気を付けてください。
5:測りやすい分度器を使う
外側と内側で逆方向の目盛りがついている分度器が多く、混乱しやすいです。そのためどちらかを紙ヤスリなどで削ったり、片側しか目盛りがない分度器を選んだりすることをおすすめします。
また、通常の分度器は180度ですが、360度(全円分度器)のものを用意するのもいいでしょう。測りやすいかもしれません。
さらに赤い刺繡糸などを0度から中心線にかけてテープで固定してつけると、目印になって角度を測りやすくなる場合もあります。ただ、ゴチャゴチャしてかえってわかりにくいと感じる子もいますから、本人と相談しましょう。
6:マス目が大きいノート・自由帳を使う
特に書字障害傾向にある人の場合、ノート・自由帳のマス目は大きい方が扱いやすいです。
漢字練習の宿題で「1日○字」などがあるかもしれませんが、マス目が大きいからといって文字数を減らさず、「指定の文字数通りで、ノートの面積は多く使う」ということにすれば問題はありません。
ただ、学校指定のノートや自由帳がある場合もありますので、その場合はお子さんや学校と相談しましょう。お子さんとしても「書きやすいこと」よりも「皆と同じものを使うこと」を優先したいかもしれません。
7:リコーダーの穴を押さえやすくする
「ふえピタ」などの穴に貼る補助シールを使うと、手元を見なくても穴の位置がわかりやすくなります。また、お子さんの弱い力でも穴を塞ぎやすくなります。
ふえピタ自体はあまり目立ちませんから、皆と同じものを使いたいと考えるお子さんにもおすすめです。
8:回しやすい縄跳びを選ぶ
持ち手部分にベアリングがついていて回しやすい縄跳びがおすすめです。逆にベアリングがないタイプの縄跳びの場合、飛んでいるうちに手首への負担が大きくなったり、絡みやすくなったりする可能性があります。
また、縄の中心に補助軸をセットすると安定して回しやすくなります。一度持ち手から縄を外し、小さくカットしたストレッチ用のゴムチューブなどを通すことでセットできます。
あとはお子さんがデザイン(色など)を気に入る縄跳びを選ぶことも大事です。特に発達障害のお子さんの場合「楽しめること」であれば集中したり愛着がわいたりする傾向にありますから、「値段や性能が同じなら、本人にとってデザインがいいもの」を選ぶことも重要といえます。
9:扱いやすい傘(折り畳み傘)を使う
発達障害であってもなくても折り畳み傘を折り畳む作業は、不器用なお子さんにとってはかなり大変です。そのため二段タイプやボタン開閉タイプの折り畳み傘を選ぶことをおすすめします。
通常の傘については、
- 傘をよく失くす:100円のビニール傘(安くて視界がいい)
- 傘を失くさない:本人がデザインを気に入った傘
を選ぶことをおすすめします。
ただ、ビニール傘など特徴のないものを使うのであれば、マスキングテープなどで自分のものとわかる目印を付けておくのが無難です。
10:ナップザックタイプの体操袋を使う
バランス感覚の弱い子の場合は、ナップザックタイプの体操袋を選ぶといいでしょう。ランドセルの上から両肩で背負うことができますから扱いやすいです。
また、入れる中身を描いたイラストや写真を縫い付けることで、中に何を入れるのかわかりやすくなるため管理が楽になります。
さらにお子さんが気にしない性格なのであれば、袋類をスケルトンのものにすることで外からでも中身がわかるようになりますから便利です。
11:汚れ対策を考えて習字道具を選ぶ
発達障害であってもなくても習字で一番困るのは、墨で汚れることだと思います。そこで学校からの指定がないのであれば、「洗濯で落ちるタイプの墨汁」を使うことをおすすめします。
さらに習字セットの中に雑巾を多めに入れて、汚れに対応しやすくしておくことも大事です。
また、通常の筆を使うことが苦手である場合は、先生と相談して筆ペンなどを使わせるといいでしょう(慣れてきたら通常の筆に切り替えましょう)。
まとめ
ここまで発達障害のお子さんにおすすめの「道具の工夫」の具体例をいくつか紹介しました。キーワードは「使いやすさ」「わかりやすさ」「管理しやすさ」「失くしにくさ」などです。
ただ、学校指定の道具があったり、お子さんが「あまり他の人と違う見た目にしたくない」と考えたりする場合もありますから、バランスを取りつつ様子を見ながら導入していくことをおすすめします。