なぜうちの子は臆病なの?「トレーニング3選をご紹介」
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらお子さんが新しい環境に馴染めなかったり、些細なことにびっくりしすぎたりすると、親御さんは「どうしてこの子はこんなに臆病なんだろう?」「些細なことに怖がりすぎじゃないかな」など、心配になりますよね。
しかし実は、子どもが「こわがりで臆病」な場合、原始反射が残っている可能性が考えられます。そのため「怖がっちゃダメ!」などと口でいっても、子ども自身がどうにかできるものではないのです。
では、どうすれば「こわがりで臆病な性格」を鍛えることができるのでしょうか。それは「脳幹」を鍛えることです。
この記事では、子どもの「こわがり」を治すために脳幹を鍛えるべき理由と、その鍛え方について解説していきます。
脳幹を鍛える理由は?
脳は「大脳」「小脳」「脳幹」の3つからなっており、脳幹はその中でも特に、人間が生きるために欠かせない役割を果たしています。たとえば、視覚や聴覚を大脳に伝えたり、呼吸や消化をコントロールしたりなどする仕事で、脳幹が働かなければ大脳や小脳が働いても生命を維持できないということです。
また、脳幹の反応は生まれたばかりの赤ちゃんが生き残るためにも影響を与えます。生まれたばかりの赤ちゃんが指を握り返したり、唇に触れると吸う動作をしたりするのは、脳幹が反応し「原始反射」を起こしているからです。赤ちゃんに生まれつき備わる原始反射は、赤ちゃんが生き延びるためには欠かせません。そして、原始反射は成長して運動機能が発達すると、生後数ヶ月から3歳ごろまでに消失していきます。
しかし、脳幹がきちんと育っていないと原始反射が残ってしまいます。すると、子どもは考える前に反射的な行動をとってしまうのです。
つまり、子どもの発達において鍛えるべきことは脳幹であるといえます。
「こわがりで臆病」なのはモロー反射が残っているせい
「うるさいところが苦手」「大きな音にびっくりしすぎる」というお子さんも珍しくありません。親からすると「臆病な性格な子」だと思ってしまう行動も、脳幹の反応による「モロー反射」が残っていることが原因です。
モロー反射も原始反射のひとつで、赤ちゃんが大きな音を聞くとビクッとして両手を広げて抱きつこうとする動作を指します。モロー反射はストレスに対する防御反応のため、私たちは適切なモロー反射がなければ外界のストレスに対して耐えられません。一定の経験を重ねることで、モロー反射なしでもストレスを防御できるようになるのです。
ところが、モロー反射が残っていると、感覚として入ってくる情報におびえてしまうため、子どもの場合は不安になりやすい傾向があります。つまり、大きな音に驚き、逃げたり固まったりするのは臆病でも怖がりでもなくただの反射であって、子どもにはどうにもならないものだといえます。
モロー反射が残存しているお子さんの特徴
・乗り物酔いしやすい
・目の端に動くものが気になる
・白い紙に書いてあるものが読みにくい
・太陽光を過剰にまぶしがる
・物音にびっくりしやすい
・中耳炎、副鼻腔炎、風邪を繰り返す
・驚いたときに大きな声を出しやすい
・環境の変化に対応しにくい
・暗闇が怖い
【こわがりで臆病な子向け】1分トレーニング3選
モロー反射が残っている場合は、赤ちゃんがモロー反射でするときの動きを、あえて意識的におこなうことがトレーニングになります。ちょっとびっくりするような動きやドキドキするような動きを遊びの中に取り入れて楽しくエクササイズしてあげましょう。
抱っこ遊び
①親御さんとお子さんが向き合った状態で、お子さんを抱く②お子さんが親御さんから手を話した状態で、後ろに思い切り倒れるような動きをする
親御さんは、お子さんが落ちないように、お子さんの腰をしっかり支える
モロー反射が残っているお子さんは、怖がって後ろに倒れようとしなかったり、服や手を掴んで離さなかったりします。親子で触れ合いながら楽しくドキドキする体験を繰り返しおこないましょう。
ヒトデ体操
①背もたれのない椅子かバランスボールの上に座り、息を吐きながら頭を下げて腕を交差する②その状態で5秒間息を止める
③息を吸いながら両腕を思い切り広げ、上半身を後ろに倒す
ヒトデ体操は、抱っこ遊びができない年齢のお子さんにおすすめの体操です。
抱っこ遊びと同様、モロー反射が残っているお子さんは後ろに倒れようとしません。怖がるうちは大人が後ろに付いていてあげて「後ろにいるから大丈夫だよ」と安心させてあげると良いでしょう。
落ちてくるボール遊び
①お子さんは床に仰向けに寝そべり、大きく両手を広げる②大きくて柔らかいボールを1メートルくらいの高さから、お子さんのお腹の当たりに落とす
③お子さんは落ちてくるボールを両手両足でつかむ
モロー反射が残っている場合、ボールが落ちてくること自体をとても怖がります。お子さんが上手くボールを取れなくても、親御さんは「なんで取れないの?」と怒ったりせず、お子さんが楽しく取り組めるようにしましょう。
まとめ
本記事では「こわがりで臆病」なお子さんの脳で起こっていることを解説いたしました。モロー反射が残っているお子さんの特徴をチェックし、当てはまる項目がある場合は、家庭でできる1分トレーニングをおこないましょう。
しかし、トレーニングは子どもが嫌がったり、時間がなかったりと、挫折してしまうこともあるかもしれません。親子がストレスなく脳幹を鍛えるために一番良い方法は、“楽しく遊びながらトレーニングをする”ことです。
日々のスキンシップを取りながら脳幹トレーニングをおこなってくださいね。