発達障害のお子さんの「夏休みの宿題をサポート」
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では、発達障害のお子さんの夏休みの宿題をサポートする方法などについて解説していきます。
「夏休みの宿題が途方もないものに思えて、親としても不安」「去年あまりできなかったからこそ今年は……」とお考えの親は少なくないと思います。
そこで本記事では、発達障害のお子さんが夏休みの宿題に取り組みやすくするためのポイントや、宿題が終わりそうにない場合の対応方法などについてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
発達障害の子が夏休みの宿題をしやすくするためのポイント5つ
それでは発達障害のお子さんが夏休みの宿題に取り組みやすくするためのポイントをいくつか挙げていきます。
1:まずは夏休みの宿題をリストアップにする
特に発達障害のお子さんの場合、「見通しの立たないこと」「存在はしているものの全体像が見えにくいもの」などを苦手とする傾向にあります。20~40日分の夏休みの宿題などはまさに典型といえます。そのためまずは夏休みの宿題をリストアップしましょう。
例えば「算数ドリル」「漢字練習」「読書感想文」「自由工作」……などと書いた紙を大きな模造紙などに貼りつけます。必要に応じて「自由工作……作るものを決める→材料を準備する→作る」などとさらに細かく書きます(スモールステップにするとわかりやすいため)。
こうしてリストアップしておけば親としても「子どもは今、どこまで夏休みの宿題を進めることができているだろうか」とすぐに理解できます(何もない状態から、お子さんにどこまで進んでいるのか聞き出すのは発達障害であってもなくても難易度が高いです)。
2:できたものから印をつけて「完了」にする
そしてできた宿題から印(色塗り、シールなど)を付けて、「完了」とします。一つ完了するごとにお子さんが達成感を味わうことができるためモチベーションが続きやすいですし、「あとどれくらいか」が視覚的にわかるというメリットもあります。
なお完了した課題は大きめの封筒などにまとめて入れておくと、だんだん分厚くなっていく封筒に対して満足感を覚えることができますからおすすめです。
「せっかくやったのに失くした!」という悲惨な状況を避けることにもつながります(終わって油断して失くすというのは考えられることです)。
3:宿題にとりかかる順番は基本的に「気分」でOK(そのために準備する)
夏休みの宿題にとりかかる順番は基本的にお子さんの「気分」でOKです。宿題そのものをやりたいかどうかは別として、気分で選んだものなら少なからず「やる気」はあるためです。
逆に「毎日全教科少しずつやれば終わるよ」などと強制しないようにしましょう。特に発達障害のお子さんの場合、同時に複数のことをこなすことが苦手な傾向にありますから、「あれもこれも」とやらせると夏休みの宿題そのものを嫌になってしまうかもしれません。
そしてお子さんがやりたい状態になったらすぐに取り掛かることができるように、「日記」「プリント」「画用紙」「原稿用紙」「自由工作の道具」などを分別して準備しておき、いつでも始められるようにしておきましょう。
4:宿題を終えての「ご褒美」を多めにする
お子さんに勉強などの習慣を付けたり、モチベーションを上げさせたりするために「何かできたらご褒美」というシステムを導入している家庭は多いと思います(効果が期待できますから今後も続けていくことをおすすめします)。
夏休みの宿題は大変ですから、普段よりご褒美をやや多めにするといいでしょう。また、自由工作、自由研究、絵日記、読書感想文など「夏休みならではの宿題」はどれも大変でしょうから、こちらもご褒美を少し豪華にすることをおすすめします。
また、「何かするたびにご褒美」でも構いませんが、例えば「絵日記をサボらず5日間連続で書けたら大きなご褒美」など長期的なご褒美を準備することで、「毎回何かもらえるわけではない(例:出勤)」「でも継続して頑張れば大きな報酬がある(例:給料)」などの社会性を身に付けることにつながります。
5:「できていること」に注目してポジティブな声掛けをする
普段の宿題であれば「よくできたね」「1問解けたね」など、ポジティブな声掛けができる方が多いと思います。ただ、夏休みの宿題のような量のある課題の場合、つい「まだ○問もあるよ!」「まだ○問しかできていないよ!」などネガティブな声掛けをしてしまうかもしれません。言うまでもなく逆効果ですからやめましょう。
特にお子さんが「1問できた!」と嬉しくなっているときに「1問できただけなのに何をはしゃいでいるの!」などと言ってしまえば、お子さんは一気にやる気を失うことでしょう(大げさでなく親は信頼を失うかもしれません)。
ですから普段の宿題を同じく「よくできたね」「1問解けたね」など「できていること」に注目した声掛けをしましょう。「机に座れたね」「お、宿題を用意した!えらいね!」など取り掛かる前の段階で褒めるのもおすすめです。
夏休みの宿題が多すぎる・難しすぎる場合は先生に相談する【発達障害ケア】
夏休みの宿題の分量や内容を確認して、量が多すぎたり内容が多すぎたりする場合は、先生に相談して分量や内容を調整してもらうことをおすすめします。宿題の本来の役目は「理解すること」ですから、相談すれば(程度はどうあれ)応じてもらえることでしょう。
「内容が難しいならまだしも、量が多いだけなら挑戦させた方が良いのでは?」と感じるかもしれませんが、「結局宿題が終わらなかった」という結果になると、宿題や勉強に抵抗心を持ってしまう可能性があります。
もちろんどのように調整するのが正解などと一概にいうことはできませんが、まず「出された夏休みの宿題を絶対にそのままやらなければならないわけではない」ということは知っておきましょう(普段の宿題についても同じです)。
最終的に夏休みの宿題が終わらなくても「できた部分」を褒める
そして最終的に夏休みの宿題が夏休み明けまでに終わらなくても、「○○ができたね!」などとできた部分を褒めましょう。そうでないと、「言われたことが全部できなかった」とお子さんが思い込み、自信を失う可能性があるからです。
特に「20~40日頑張ったのに終わらなかった……」という印象のまま終わると酷い屈辱感を味わうことになるかもしれません。そのため「○○ができたね!」だけでなく、「頑張ったから字がキレイになったね」など、「成長」に触れて褒めることで、「頑張ってよかった」と実感させることが大事です。
また、現実として夏休みの宿題が終わらないお子さんは少なくありません(発達障害であってもなくても)。もちろんすべて終わるに越したことはありませんが、「大失敗ではない」ということは親の立場としても理解しておきましょう。
まとめ
ここまで発達障害のお子さんが夏休みの宿題に取り組みやすくするためのポイントなどについて解説しました。まずはリストアップして「やることと分量の可視化」をし、その上で少しずつ「完了」させて達成感を味わわせていくことが大事です。
また、必要に応じて先生などと相談して、夏休みの宿題の分量や内容の調整も行いましょう。さらに親が「たとえ宿題が全部終わらなくても失敗ではない(できている部分も多い)」と理解しておくことも重要といえます。