発達障害のお子さんの「作文をサポートする」
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では発達障害のお子さんの作文や読書感想文をサポートするためのポイントなどについて解説していきます。
「面白かったです、だけで読書感想文が終わってしまう」「実は作文や読書感想文についてどう手助けするべきなのかわからない」と悩んでいる方は多いと思います。
そこで本記事では、発達障害のお子さんが作文や読書感想文を苦手としやすい理由や、サポートしていくための具体的な方法や要点などについてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
発達障害でなくても作文や読書感想文は苦手で当たり前|その2つの理由
例えば家族で海に遊びに行き、帰宅してから日記を書かせて「海が楽しかったです」の一行だけで終わっていると親としては心配になると思います。ですが、実は発達障害であってもなくても「文章作成」が苦手な人は少なくありませんから心配する必要はありません。
そして「苦手になりやすい理由」がありますから、その部分を意識して親がサポートしてあげれば無理なく作文ができるようになります。では、作文を苦手になりやすい理由を2つ挙げます。
1:そもそも「文章の書き方」を学校で教わらない場合もある
学校や担任の先生の方針によりますが、そもそも「文章の書き方」をあまり具体的に教えない場合もあります。受験科目に「国語(現代文)」はありますが、「読み解く能力」は重視されても「書く能力」は軽視される傾向にありますから致し方ないことです。
2:「今日何があったか」は意外と忘れる
日記や絵日記についてですが、たとえ海に遊びに行くなど「非日常的」なことがあっても、意外と具体的に何があったかは忘れてしまうものです。
特に発達障害の方の中には記憶することを苦手としている人も多いですから、いざ日記・絵日記を書こうとしても思い出しにくくなり、手を抜くつもりがなくても「楽しかった」「面白かった」など感情・感想を書くだけで終わらせようとしてしまう場合があるのです。
発達障害のお子さんの作文や読書感想文をサポートする方法・ポイント3つ
それでは発達障害のお子さんの作文や読書感想文を効果的にサポートする方法やコツをいくつか挙げていきます。
1:穴埋めできるフォーマットを作る
先ほどもお伝えしましたがそもそも文章の作り方を知らないお子さんが多いですから、穴埋めできるフォーマットを作ることをおすすめします。例えば以下の通りです。
- 題名:○○○○
- いつ:○月○日
- どこで:○○(場所)に行きました。
- 誰が:○○君が(お父さんが、お母さんが……)
- 何を、どのように、どうして:○○を、○○のように、○○して
- 結果:○○になりました。
- 感想:僕は(私は)○○○○○と思いました。
このような穴埋め形式であれば書きやすくなります。また、何日も書いているうちにお子さんが徐々にフォーマットを覚えて「文章の書き方」を理解して、フォーマットがなくても書くことができるようになっていくかもしれません。
2:出来事を思い出しやすい写真を見せる
例えば海に遊びに行ったのであれば、デジカメなどの写真を見せながら「海で泳いだね。どうだった?」「バーベキュー美味しかったね」などと話しかけることで、出来事を具体的に思い出しやすくなります。
人間の脳は不思議なものであり、写真などから「全体の印象」「色」「匂い」などを思い出すことができれば、そこから芋づる式にいろいろなことを思い出すことができるケースが少なくありません。
3:インタビュー形式にする
お子さんが作文や読書感想文に慣れるまではインタビュー形式にしてみるのもいいでしょう。
例えば「今日は何日ですか?(いつ)」→「どこに行きましたか?(場所)」→「誰が何をしたのが面白かったですか?」→「それでどうなりましたか?」→「それをどう思いましたか?」などと聞いていきます。
発達障害のお子さんの作文・読書感想文作成手順例5ステップ
続いては発達障害のお子さんの読書感想文の作成手順例を紹介していきます。ここでは読書感想文を例にして解説しますが、日記や作文にも応用できますからぜひ活用してください。
もちろんお子さんが慣れてきたり、得意だったりする部分については簡略化したりアレンジしたりしても構いません。
1:本を読ませる(親も読んでおく)
学校から指定されている本がある場合はそれを、指定がない場合も担任の先生と相談しながら決めることをおすすめします。難しすぎる本では、読む段階でギブアップする恐れがありますから大事なことです。
読む本が決まったら親が先に読んでおきましょう(子ども向けの本になるでしょうからすぐに読み終わるはずです)。親が内容を理解しておけばサポートしやすくなります。
2:穴埋めフォーマット作りorインタビュー(メモを取りながら)
先ほど解説した通り、穴埋めフォーマットを作ります。もしくはインタビュー形式にしましょう。お子さんの言ったことをメモに記録しておき、次のステップで使います。
インタビュー形式にする場合の一例を挙げます(穴埋めフォーマットにする場合の同じようにするといいでしょう)。
- 「この本どうだった?」→メモ
- 「気になったところは?(一番覚えているところは?)」→メモ
- 「どうしてそう思ったの?」→メモ
- 「本を読んでみてやってみたくなったことは?」→メモ
- 「この本はどんな人に読んでほしい?」→メモ
ときどき「それって○○っていうこと?」など要点の確認をするといいでしょう。また、もちろん反応の悪い質問もあると思いますが、その場合は別の質問をすることをおすすめします(例:「気になったところは?」で反応が薄いなら「一番好きなキャラは?」に変える)。
3:接続詞(でも、そしてなど)でつなげる
お子さんから一通りの回答が出たら、接続詞(でも、そしてなど)でつなげます。接続詞は付箋などに書いておき、お子さんの回答に入れていく形式にするといいでしょう。
できればお子さんにこの工程も行わせるべきですが、少し難しいですから親がやってしまってもいいと思います。まずは2で解説した「5W1Hを答えていく作業」ができるようになれば十分ともいえますから、柔軟に考えましょう。
もしくは半分くらいは親が作業して、残り半分を「ここにはどの付箋を入れればいいかな?」などとお子さんに聞きながら進めていくといいでしょう。
4:原稿用紙に下書きする(必要に応じて)
文章が完成したら原稿用紙にそのまま書き写すことになりますが、特に発達障害のお子さんにとってはとても辛い作業になる可能性があります(楽しくない、根気がいる、狭いところに字を入れにくいなどの理由から)。
そのため慣れるまでは親が下書きしてしまうことをおすすめします。水色などの目立たない色の鉛筆で薄く書いておき、それをお子さんがなぞります。
5:完成(お子さんをしっかり褒めましょう)|誤字脱字の指摘は基本的になし
お子さんがすべてなぞり終えたら完了です。お子さんにとって重労働だったでしょうから、「よく頑張ったね!」などとしっかり褒めてあげてください。完成させることができれば自信が付き、だんだんと作文や読書感想文への抵抗感がなくなっていくかもしれません。
なお完成した文章を見直すと、誤字脱字が見つかると思います。ただ、これについては基本的に指摘しなくていいでしょう。まずは完成させることが大事ですし、あまり細かくいうとお子さんが作文そのものを嫌ってしまうかもしれません。
発達障害であってもなくても大人でも子どもでも、文章作成で誤字脱字をする人はかなり多いですから、あまり気にしないようにしましょう。
学校の許可があればパソコンで読書感想文を書いても構いません
もちろん学校の許可が必要ですが、パソコンで読書感想文を書いても構いません。手書きを苦手とするお子さんでも、キーボード入力であればスムーズにこなす場合もあります。
また、キーボード入力でなく、音声入力をするのもいいでしょう。ただ、誤字脱字が多くなるでしょうから親が修正しましょう(本人にやる気があれば修正させます。ただし無理強いは厳禁です)。
まとめ
ここまで発達障害のお子さんの作文・読書感想文をサポートする方法などについて解説しました。「穴埋めフォーマットorインタビュー形式」で文章作り→接続詞でつなげる→親が下書き→お子さんが書くというステップで作成するのがおすすめです。
本を読む能力、文章を作る能力、書く能力、そしてそれぞれへの意欲はお子さんによって大きく異なりますから、お子さんの様子をきちんと見ながら、できる限りちょうどいいサポートをしていきましょう。