発達障害のお子さんの「ゲームの管理」について
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では、発達障害のお子さんのゲームの管理について解説していきます。
「注意してもずっとゲームをやっていて困る」「長時間ゲームをやっていて心配」などと悩んでいる親は少なくないと思います。
そこで本記事では、「そもそも時間制限をする必要はあるのか」ということも含めて、お子さんのゲームの管理や、考え方などについてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
小さいうちはキッチンタイマーなどでゲームの時間を管理できる【発達障害ケア】
お子さんが小さいうちは「30分だからね」などと伝えつつ、キッチンタイマーを使えばお子さんはゲームをやめられる場合が多いです。
発達障害のお子さんは「目に見えないもの」を実感しにくい傾向にあります。そして「時間」も目に見えないものの一つであるため、単に「30分だからね」と言うだけではわかりにくいかもしれません。ですがキッチンタイマーで時間の「見える化」をすれば理解できることでしょう。
しかし、お子さんがある程度成長して「もっとゲームをやりたいんだよ」と堂々と主張してきてからが問題です。「だめよ!30分までにしなさい」と言われても、聞き入れ難いかもしれません。
では、どうすればいいのでしょうか。次項から解説していきます。
発達障害のお子さんが成長してからゲームについて管理するためのポイント3種類
それでは発達障害のお子さんがある程度成長してから、ゲームのことについて管理するためのポイントをいくつか解説していきます。もちろん最終的には各家庭で判断することになりますが、参考にしていただければ幸いです。
1:ゲームによる問題が起きていないならそのままでいい
例えば「1日数時間ゲームをする」というのは大人の感覚からすると、よくないことに感じると思います。ですが一例として、
- ゲームに熱中して宿題ができていない
- ゲームをやり続けてすぐに食事をしない
- ゲームをするとき目が近すぎて視力が落ちそう
などのデメリットが発生していないのであれば、実は「ゲームをやめさせる合理的な理由」はないといえます。特に発達障害のお子さんの場合、「合理的でないこと(例:とにかくゲームは30分までにしなさい!)」を受け入れにくい傾向にありますから、時間制限はしないことをおすすめします。
2:ゲームで問題が起きている場合のやめさせ方は?|ゲームへの理解を示すのが大事
ゲームによって問題が起きている場合は、やはり親がなんとかしてあげる必要があります。その際、ポイントとなるのが「ゲームへの理解を示すこと」です。
例えば、親としても何も知らない人に「もうちょっと仕事を早く切り上げられないの?」と言われるとイラっとすると思いますが、子どものゲームについても同じことが起きます。
ゲームにもよりますが、「30分で終わらせる」など「時間によるキリ」はつきにくいものが多いです。ですが「あとどれくらいでセーブできるの?セーブしたら今日は終わりにしようね」「このボス倒せたら終われる?」などの言い方であれば、お子さんとしても「僕がやっていることをちゃんと理解してくれている」と感じますから、聞き入れやすくなります。
親がゲームについて理解するのが難しければ、「キリがいいところでご飯にしようね」などでも構いません。いずれにしても、「もう時間でしょ!やめなさい!」では理解が得られません。仕事でたとえるなら「残業なんてしないで早く帰ってきなさい!」と言われているようなものです。
3:ゲームに依存・逃避している場合の対処方法は?
ここまでは「お子さんがゲームを心底楽しんでいる」ということを前提に解説してきましたが、実は「嫌なことを考えないためにゲームをしている(依存・逃避)」というケースもあります。
この場合、ゲームを取り上げたとしても別のものに依存したり、気力がなくなって宿題などができなくなったりする可能性がありますから、まずは「目が悪くならないか心配だなあ」などと気遣いの声をかけることが大事です。
また、子どもの状態によっては、話を肯定的に聴いたり、スキンシップを増やしたりして、心身を癒やしてあげることも必要かもしれません。
ゲームのことに限らずお子さんの様子に注意深く目を向けることが大事【発達障害ケア】
ゲームのことに限らずお子さんの様子をしっかり見て、以下のことを見極めることが大事です。
- それによって何らかの問題が生じているのか
- 「楽しい熱中」なのか「依存」なのか
- 「親のこだわり」でやめさせたいのか
問題が起きておらず、かつ依存でなく純粋に楽しんでいるのであれば、ゲームをやめさせる合理的な理由はないといえます。それでもどうしてもゲームをやめさせたり時間制限を付けたりしたい場合は、「別の視点から(こじつけではない)合理的な理由を用意する」「ゲームをやめてほしい理由を誠実・冷静に説明する」しかありません。
その上でやめないのであれば、ゲームをやめさせることは諦めるべきでしょう。親としてはむしろ、「ゲームそのもの」や「お子さんがゲームを楽しんでいる理由」を深く理解し、寄り添えるようにしていくことをおすすめします。
お子さんと一緒にゲームをするという手もある
ゲームのジャンルにもよりますが、可能であればお子さんと一緒にゲームをしてみるのもおすすめです。ゲームに「親と一緒にやった」という付加価値が加わること、お子さんにとってさらに楽しくなり、短時間でも満足できるようになるかもしれません。
ゲームのジャンル的に難しかったり、お子さんが拒否したりする場合も、親が一人でゲームをしてみるのもいいでしょう。「お子さんが楽しんでいる世界」をより深く理解できますし、「お母さんもゲームを始めたんだよ」などとコミュニケーションのネタを作ることもできます。
まとめ
ここまで発達障害のお子さんのゲームの管理などについて解説しました。まずゲームをすることによって問題が生じていないのであれば、ゲームをやめさせる合理的な理由はないといえます。「お子さんの世界」を尊重しましょう。
ただ、問題が生じていたり、「依存」や「逃避」でゲームをしていたりする場合は、手を打つ必要があります。ただし「やめなさい!」と頭ごなしに叱るのではなく、「理解することと」「寄り添うこと」を意識しながらお子さんとコミュニケーションを取りましょう。