発達障害のお子さんの「登校しぶり」の4つのレベルと対応方法
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では、発達障害のお子さんの「登校しぶり(登校を嫌がる状態)」について解説していきます。
「登校はするものの、これまでより嫌な顔をするようになった」と悩んでいる方もいれば、「泣くほど学校が嫌なようで、どうすればいいかわからない」という状態の家庭もあると思います。
そこで本記事では、発達障害のお子さんの「登校しぶりの4つのレベル」と、レベル別の対応方法などについてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
発達障害のお子さんの登校しぶりには4つのレベルがある
いろいろな考え方がありますが、発達障害のお子さんの登校しぶりには4つのレベルがあるととらえるとわかりやすいです。ではそれぞれのレベルについて簡単に解説していきましょう。
レベル1:サボりたい気持ちが強い
宿題や登校などについて「サボりたい」という気持ちが強くなり、忘れ物などのミスが増えます。お子さんの傾向にもよりますが、季節の変わり目、行事の準備期間など、「いつもと違うことがある時期」に発生しやすいです。
レベル2:憂鬱な状態
朝起きた直後から明らかに機嫌が悪い場合は、「サボりたい」というレベルを過ぎてしまったと考えるべきです。「いつもと違うことがある」というよりは、例えば「国語が嫌」「給食が嫌」「クラスメイトの○○君が嫌」など具体的な理由がある場合が多いです。
レベル3:強い不安を感じている状態
ぼーっと楽しくなさそうにゲームをして現実逃避をしたり、どんなに声掛けをしても全く動かなかったりするなどの場合は、「学校に関する何か」に対して強い不安を感じている可能性が高いです。
レベル2で挙げた「国語が嫌」「給食が嫌」「クラスメイトの○○君が嫌」などの、程度が酷かったり長引いていたりすると、このレベル3になってしまう可能性があります。
レベル4:鬱状態
家でも穏やかでいられなくなり、心身の状態が不安定になったり、布団から出ることさえできなくなっていたりする場合は、鬱状態になってしまっている可能性が高いです。
「学校に関する何か」というレベルではなく、「(本人のイメージとしての)学校全般」に対して露骨な拒否感を示したり、腹痛、不眠、食欲低下などが慢性的に続いたりするケースも多いですから、すぐに手を打つ必要があります。
ちなみに大人が鬱病になる場合も、以上のような過程で進んでいく場合が多いです。「子どもだからそれほど心配しなくても大丈夫」「子どもは鬱病にならない」などということはもちろんありません。
発達障害のお子さんの登校しぶりへの対処方法|4つのレベル別に解説
それでは発達障害のお子さんの登校しぶりへの対処方法を紹介していきます。ここまで解説してきた4つのレベルについてそれぞれお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
レベル1:ごほうびをパワーアップする
普段から「○○ができたらご褒美」など、ご褒美作戦を採用している家庭は少なくないと思います。最初のうちはご褒美目当てでもいいので課題に取り組めると徐々に「習慣」になっていきやすいですから、これからも続けていくことをおすすめします。
そしてレベル1の登校しぶりを見せている場合は、このご褒美をパワーアップさせることでお子さんのモチベーションが上がり、登校しやすくなる可能性が高いです。
その上で「帰ってきたらリラックスできるように家の手伝いをあまりさせない」「登校前に夕飯やおやつのリクエストを聞いておく」など、家を幸せな場所にすることで、お子さんは苦しい時期を乗り越えやすくなります。
レベル2:具体的な工夫で「嫌なこと」に対処する
レベル2になったらご褒美で乗り切るだけでなく、具体的な工夫をして「嫌なこと」をできる限り取り除いてあげることが大事です。レベル1が「ゴールにご褒美を用意する」なら、レベル2はそれに加えて「道中の小石を取り除く」というイメージです。
例えば「給食で嫌なメニューがある」なら無理に食べなくていいと言ってあげる。「漢字の書き取りが嫌」ならノートに青鉛筆で下書きをしてあげる。「友達に嫌なことを言われた」なら、「それは嫌だったね」と共感しつつ、対処方法をイラストで説明してあげるなどです。
また、すべてのレベルに共通しますが、「そんなことは思っちゃダメ!」などとお子さんの気持ちを否定するのは厳禁です。そうではなく「辛かったね」「そういうことある~」など共感を示しつつ、対応することが大事です。レベル2からはレベル1以上に意識しましょう。
レベル3:学校にさらなる理解と対応を求める
「嫌なこと」の程度が酷かったり長引いたりすると、レベル1~2の方法では登校させることが難しくなってしまう可能性が高いです。そのため学校にさらなる理解と対応を求めることをおすすめします。
例えば「漢字の書き取りが嫌」なのであれば青鉛筆で下書きをしてあげるだけでなく、担任の先生などと相談して、お子さんに見合った対応をしてもらえるようにします。発達障害自体やお子さんの特性について説明すると、理解を得やすくなります。
なお、このあたりから親としても精神的にかなり辛くなる場合が多いです。ですから、家族に手伝わせて家事の負担を減らしたり、専門のカウンセラーを頼ったりして、親の負担もできる限り和らげていくことが大事です。
レベル4:学校に行くことが「すべて」ではないと考える|医師にも相談する
慢性的な心身の不調が続いたり、不眠状態が続いていたりする場合は、レベル4になったと考えるべきです。もちろん正確な診断は医師にしてもらってください。ここまできたら一度は医師に診てもらうべきという意味でもあります。
その上で保護者としては、学校が「すべて」ではないと考えましょう。もちろん「できれば」学校に行ってほしいと思うのはいいですが、ホームスクーリング、フリースクール、特別支援学校などさまざまな選択肢があることも忘れないでください。
また、最初のうちは、学校に対して親から「風邪を引きました」などと伝えてズル休みをしながら様子を見てもいいでしょう。大切なのはお子さんを塞ぎ込ませず(親も塞ぎ込まず)、ゆったりでもいいので「生き抜く」という気力・体力が燃え尽きないようにすることです。
まとめ
発達障害のお子さんに限りませんが、登校しぶりは4つのレベルに分けて考えることができます。できるだけレベル1で止まるように、お子さんに対して「その気持ちわかるよ」と共感しつつ、具体的な対応を取ることが大事です。
また、学校が「すべて」ではないということも頭の片隅に入れておきましょう。「多くの人が歩む道」でなくても、遠回りでも、ゆったりでも、お子さん自身に「生き抜く」という気力・体力があればそれで十分です。