発達障害の子の親が「家事を楽にするための基本方針」
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では発達障害のお子さんを持つ親が、家事を楽にこなす方法などについて解説していきます。
「子どものサポートで手一杯で家事まで手が回りにくい」「やることが多すぎてパニック状態に近くなることもある」などと悩んでいる方も多いと思います。
そこで本記事は発達障害のお子さんを持つ家庭で、家事を楽にするための基本方針や、具体的な「手抜きテクニック」などについてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
発達障害の子がいる親が家事を楽にこなすための3つの基本方針
発達障害のお子さんのいる家庭では、子どもをサポートしなくてはならないことが多いです。そして、その上で家事もするなるとかなり大変です。そのため以下の3つの基本方針を意識して家事をできる限り楽にこなすことをおすすめします。
- 優先順位決め
- 後回し
- 手抜き
では、それぞれについて解説していきます。
1:優先順位を決めて「やるべきこと」を整理する
やるべきことが多く、かつそれが頭の中で整理できていないと、ストレスが溜まりやすくなります。そのためまずはやるべきことを紙に書き出し、その上で優先順位を付けることをおすすめします。
そして上から順にこなしていくとスムーズになりますし、少しずつでも「終わりに向かっていく感覚」を得られますから精神的にも楽です。
「細かな作業も全部書く」「大きな作業だけ書く」などといろいろありますが、「優先順位を付ける行為そのもの」に慣れていけば、ご自身にとってどのようなやり方が合っているのか見えてくるはずです。
2:明日でもいいことは後回しにする
「今日できることは今日のうちに」「そうすれば明日が楽になる」と考える人もいると思いますが、そういった真面目な方は、今日頑張ると明日も頑張ってしまうかもしれません。
ですから明日でいいことは後回しにすることをおすすめします。翌日もチェックしてみてもっと後回しにして良さそうなのであれば、さらに翌日へと回しましょう。そうしているうちに「やらなくていい」となったり、忘れたりする場合もあります。
忘れるくらいなら重要なことでないはずです。気にせずに緩く生活して、未来の自分に任せましょう。
3:少しずつ手抜きをしていけば家族も慣れる
例えばいきなり掃除の頻度を大きく落としたり、冷凍食品ばかり使ったりすると家族が違和感を覚えて不満を言ってくるかもしれません。ですが少しずつ手抜きをしていけば、家族もだんだん慣れていきます。
食事については手抜きが続くとどこかで家族から小言が出ると思いますので、頃合いを見ながらちょうどいいタイミングで家族の好物を作ったり、少し手の込んだメニューに挑戦したりしましょう。
家族全体で手抜きに慣れていくと家の中の雰囲気がおおらかになりやすく、発達障害のお子さんにとっても過ごしやすくなりますからおすすめです。
発達障害のお子さんを持つ家庭の家事手抜きテクニック5選
続いては発達障害のお子さんを持つ親の家事手抜きテクニックを5つ紹介していきます。ここで挙げていくのはあくまで一例ですから、参考にしつつ他にもアイデアが出たらどんどん取り入れていくことをおすすめします。
「こんな方法もある!」と楽しむことができれば、多少なりとも家事へのモチベーションを保ちやすくなるのではないでしょうか。
1:お子さんの靴は洗濯機で洗う
上履き、体育館シューズ、外履きなどをこまめに手洗いするのはとても大変です。なので靴は洗濯機で洗ってしまうことをおすすめします。洗濯ネットにくるんで洗ってしまえば大丈夫です。
ただし洗濯機の乾燥機能は使わず、日干ししましょう。そうでないと靴がすぐに傷んでしまいます。また、乾燥機能を使わなくてもどうしても靴へのダメージはありますから、リーズナブルな靴を選ぶといいでしょう。
2:水筒は「水筒カバー+ペットボトル+水+粉末」にすると楽
魔法瓶などの水筒は洗うのが意外と大変です(特にフタ)。そのためお子さんの水筒は「水筒カバー+ベットボトル+水+粉末(お茶など)」にすることをおすすめします。ペットボトルに水と粉末を入れ、振って、キャップを締めて、水筒カバーに入れるだけで準備完了です。
お子さんが帰宅したら毎日洗って(唾液には菌が多いです)、洗っても茶渋などが落ちなくなってきたらそのペットボトルは捨てて、新しいペットボトルに取り替えましょう。
なお運動会以外水筒は持たせていない家庭も多いと思います。ですが特に発達障害のお子さんの場合は、「休み時間に水道前に並んで水を飲むこと」を煩わしく感じてあまり水を飲まなくなる可能性もありますから、毎日水筒を持たせるのが無難です。
3:自宅での水分補給のためにウォータージャグを置く
スポーツの大会などで使うウォータージャグを家に置いて、お子さんにセルフでお茶などを飲ませるようにすると楽です。特にお子さんが「お茶飲みたい!」などと頻繁に言ってくる場合はおすすめです。
4:家電などを活用して快適にする(特にキッチン)
お掃除ロボットや食器洗浄機など、便利な家電を使って家事を楽にすることをおすすめします。購入段階でコストはかかるものの、それで日々の負担が減るのですからすぐに回収できるはずです。
エアコンや冷蔵庫なども、できる限りメンテナンスの負担が少ないものを選ぶといいでしょう(メンテナンスフリーのエアコンもあります)。
そして特に「キッチンの環境向上」を優先することをおすすめします。毎日立つ場所ですし、料理・皿洗い中などに、リビングでゆったりしている家族のことを考えるとイライラしてくる場合もあるからです。座って作業できるようにイスを用意するのもいいでしょう。
5:掃除・片付け・洗濯のペースを落とす
掃除は目立つゴミだけを拾って、掃除機を使ったり片付けをしたりするのはペースを落としても構わないはずです。特に学校の長期休暇では、「どうしても散らかる」という発想で、最初からさらに手を抜くのもいいでしょう。
洗濯についても何日か溜めてもいいはずです。ただ、もちろん同じ服を洗わずに着回すことがないよう、余裕を見て衣服を調達しておくことをおすすめします。
まとめ
特に発達障害のお子さんを持つ家庭の場合、家事は「優先順位決め」「後回し」「手抜き」の3つを軸にして、できる限り楽にこなすことをおすすめします。それによって親に精神的な余裕が生まれれば、お子さんとよりおおらかに接することができるはずです。
また、必要に応じて今回紹介したような家事の手抜きテクニックを実践したり、ご自身でも「手抜きアイデア」を出してみたりしてはいかがでしょうか。