発達障害のお子さんに対して「親が怒っても良い3つの理由」
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では「発達障害のお子さんに対して親が怒っても良い」ということについて解説していきます。
「親なのだから何があっても怒るべきではない」と感じている方もいるかもしれませんが、実際にはある程度怒ってこそ健全とも言えます。
そこで本記事では、発達障害のお子さんに対して親が怒っても良い理由や、その上でできるだけ怒らないようにするための考え方などについてお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
親が怒ってしまっても良い3つの理由|発達障害ケア
「親がお子さんを怒ってしまうことは仕方がない」と言われてもわからない、わかりたくない方は多いと思います。ですが理屈として「怒ってしまっても良い理由」があると納得できるのではないでしょうか。
お子さんが発達障害であってもなくても、他の部分に難しさを感じているとしても、ぜひ参考にしてください。
1:お子さんへの関心が強いからこそ怒る
例えばそれほど興味のない芸能人が何らかの不祥事を起こしても、怒りはしないと思います。なぜならその芸能人のことを、ほとんどどうでもいいと思っているからです。
一方、お子さんに対しては強い関心があるでしょうし、成長全般に対して責任を感じていることでしょう。そして、「本当はこんなことをしないはずなのに」「もっとこうできるはずなのに」と信じているからこそ、時に怒りを抑えられなくなるはずです。
2:お子さんが徐々に「自由」になっていくからこそ怒る
お子さんがある程度成長するまでは、やはり「親の言う通り」「親にコントロールされる」という状態になりやすいです。これは悪いことではありませんし、制御が比較的難しい発達障害のお子さんであってもそうなる傾向にあります。
ただ、お子さんが大きくなっていくにつれて「自由」になっていきますし、親の意思に沿わない言動を取ることも増えます。ときには「なぜ!?」と疑いたくなる行動をする場合もありますし、身体的成長に伴い活発ないたずらも多くなっていくかもしれません。
そのためお子さんが成長していくにしたがって、徐々に「怒りたくなる機会」もしくは「怒るべき場面」が増えていくのは当然なのです。
3:我慢しすぎると自責につながる|いずれ子どもにも影響する
怒りたい気持ちを我慢しすぎると、子どもを責めない代わりに、自分自身を過剰に責めるようになる可能性があります。すると抑うつ状態などにつながり、物事全般に関するモチベーションが下がっていく恐れがあります。
するとお子さんのサポート全般がおろそかになったり、子どもに対する反応が薄くなっていったりするかもしれません。そうなるとお子さんが発達障害であってもなくても、「長期的に深く傷ついていく」という状態になりかねません。
もちろん「ストレスを溜めないために怒る」などと開き直るべきではありませんが、「鉄の意思で怒りを抑えないと」とまで思うべきではないのです。「怒ることができるのは心が元気な証」と考えてみてはいかがでしょうか。
それでも発達障害のお子さんに怒らないようにするための2つの考え方
ここまでお伝えした通りお子さんが発達障害であるかないかに関係なく、親が時折怒ってしまうのは仕方がないことですし、むしろ健全です。
ただ、それでも極力怒りたくないのが親心でしょうから、ここからは「怒らないようにするための考え方」を2つ挙げていきます。
1:「怒りの直接的な原因は子どもではない」と考える
お子さんがどのように振る舞っていても、最終的に「怒る」という選択をするのは親自身です。つまり「怒るかどうか」は100%親が決めることができます。
「子どもがもう少しこうなれば怒らなくて済む」「環境がもうちょっとこうなれば怒らないでいられる」などの考えを捨ててみる。すると「自分はどうすれば怒らずにいられるか」を考えることに集中できるようになり、本当に怒る回数が減るかもしれません。
なお「子どもがもう少しこうなれば」「環境がもうちょっとこうなれば」を実現するために動いてももちろん構いません。ただ、それと「怒るかどうか」は無関係ということです。
2:「怒らない」と決めておく(アクトカーム)
「怒りたくないなあ」ではなく「怒らない」と強く決めておくと、カッとするようなことがあっても声を荒げにくくなります。このように「○○しない」を決めておく手法のことをアクトカームと呼び、怒りのコントロール以外にも役立ちます(例:悪口を言わないなど)。
「怒らない」が抽象的すぎて意識しにくい場合は、「大声を出さない」「早くしなさい(などの自分の口癖)、を言わない」「睨まない」などと決めてみるといいでしょう。
また、「この先ずっと怒らない」などと決めると気が遠くなるので、まずは「今日は怒らない」「今日学校から帰ってきてから寝るまでは怒らない」などと目標を設定するのもおすすめです。そして徐々に期間を伸ばしていくと、「怒らないこと」に慣れていくことでしょう。
まとめ
お子さんが発達障害であるかどうかにかかわらず、親も人間である以上は怒ってしまうのが当然ですし、むしろたまに怒る方が健全とも言えます。
ただ、それでも怒る回数を減らしたいのであれば、「最終的に怒るかどうか決めるのは100%自分」と理解すると、自分の感情に集中できるようになり、本当に怒りにくくなるかもしれません。