発達障害のお子さんのパニック状態を落ち着かせるための6ステップ
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では、発達障害のお子さんのパニック状態を落ち着かせる方法などについて解説していきます。「そもそもパニックって何?」「安定してパニック状態をなだめる方法を知りたい」という方は少なくないと思います。
そこで本記事では、パニックの大まかな定義、発達障害のお子さんのパニック状態をなだめる方法、落ち着いてからのケア方法などに関してお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
ここでいう「パニック状態」とは?
明確な定義はありませんが、パニックとは以下のような状態のことを指します(パニック映画などの言葉から連想されるパニックとは基本的に異なります)。
- 「予測のできないこと」に直面して
- 「未知への不安」や「過去の嫌な記憶」の影響で
- 思考や身体の動作が止まってしまう状態
ただし「怒って暴れること(癇癪など)」が同時に発生する場合もあります。また、身体の動作は止まっていても表情はニコニコしている可能性もありますので、「身体は固まっているけれど表情は柔らかいままだから大丈夫」などと思い込まないようにしましょう。
「パニック障害」とは異なります
ちなみにここでいう「パニック」は、「パニック発作」や「パニック障害」とは異なります。
- パニック発作:突然、激しい不安や恐怖感と共に呼吸困難などの症状が出る現象
- パニック障害:「パニック発作のせいで大変なことになるのでは」と強い不安を抱える現象
パニックを起こしやすい特性が、必ずしもパニック障害の発症に直結するわけではありませんが、心配であれば一度専門家に相談することをおすすめします。
発達障害のお子さんのパニック状態に対応するための6ステップ
続いては発達障害のお子さんのパニック状態に対応するための手順を紹介していきます。もちろん状況によって順番が前後したり、ステップが追加・削除されたりすることもあると思いますが、ぜひ参考にしてください。
1:脅威から物理的に離す|刺激を減らす
お子さんが何らかの脅威を感じている場合は、物理的にその脅威から離してあげることが大事です。そうすることで受ける刺激が減るため、徐々に落ち着きを取り戻していくかもしれません。
「この先の予想のつかない事態が起きている(起きそう)」という場合は、例えばイヤーマフをつける、テレビを消す、カーテンを閉める、お子さんの前に立って視覚情報を減らすなどして、刺激を減らしてあげます。
とにかく情報・刺激が多くて混乱している可能性が高いため、その源からできるだけ遮断していくイメージです。
2:お子さんの様子を見ながら抱っこ、撫でる、手をつなぐなどする
お子さんが嫌がらない場合は、抱っこ、背中を撫でる、手をつなぐなどのことをすると「守られている」という感覚になるため、情報・刺激が多くても徐々に落ち着いていくかもしれません。
ただし「やめて!」と言ったり、手を振り払ったりするのであればすぐにやめましょう。テレビドラマのように強く抱きしめると逆効果になりかねません。また、感覚過敏などで普段からあまりスキンシップを好まないお子さんに触れるのももちろんおすすめしません。
3:必要に応じて安全な場所に移動する
人通りの多い場所などにいる場合は、そろそろ安全な場所にお子さんと一緒に移動しましょう。もちろん最初から落ち着ける場所にいるのであれば動く必要はありません。
ただ、落ち着ける場所にいても「移動による精神的なリセット」をした方がいいケースもあるので状況によって判断してください。
4:一声かけてから親は移動する、もしくは黙って一緒にいる
お子さんがある程度落ち着いてきたら、親は「ここにいるね」「一緒にいるね」と言って黙って一緒にいたり、「待ってるね」と声をかけて少し距離を取ったりします(ただしお子さんから目を離さない)。
これによってお子さんがさらに落ち着くための時間を作ることができます。お子さんがリラックスすることが大事なので、ここで何か具体的に話しかけて情報量を増やさないようにしましょう。
お子さんが何か話しかけてきても基本的には「うんうん」「そうだね」と返事だけをするのが基本です。ただ、ある程度きちんとした言葉を返す方が落ち着くお子さんもいますので、お子さんの性格やシチュエーションなどを見て方針を決めていただければと思います。
5:お子さんの表情が不安そうに変わったら「怖かったね」など過去形で話す
お子さんの気持ちが落ち着いてくると、徐々に客観的に状況を理解して「親はどこにいるんだろうか」「今、この状況は安全なのだろうか」などと考えて不安を感じ始めます。心配そうな顔で親の方を見たり、キョロキョロしたりするので、このタイミングで対応を変えます。
具体的には「怖かったね」「嫌だったね」「よく我慢したね~もう大丈夫だよ」などと過去形で話しかけます。過去形にすることによって、お子さんも「危機は去った」と認識しますので、とても大事なテクニックです。
逆に「大丈夫?」「安心した?」などと「まだ続いていること」かのように聞いてしまうと、お子さんがまた落ち着かなくなる可能性がありますから気を付けてください。
6:お子さんの感情が爆発したら、ひたすら共感・肯定して受け止める
ここで再びお子さんの感情が爆発して、泣いたり叫んだりするかもしれません(驚くような激しい泣き方をする場合もあります)。
それに対して親はできるだけとまどわず、「そうだよね」「それは辛かったね」「頑張ったと思うよ」「お母さん、○○君は本当に偉いと思う」などと、ひたすら共感・肯定をして受け止めます。
とにかくお子さんの心がボロボロになっているタイミングなので、「一回落ち着いてきたのだからお説教をしよう」「あまり泣くのも良くない(から甘やかさないようにしよう)」などとは考えないでくださいね。
発達障害のお子さんのパニック状態が落ち着いてからの2つの対応
続いては発達障害のお子さんのパニック状態がおおよそ落ち着いてからの対応を2つ紹介していきます。この対応をするかどうかで、その後のお子さんの行動やコンディションが変わってくるかもしれません。
1:体力の回復をさせてあげる
パニック状態になることで身体的にも疲れている可能性があるため、体力の回復をさせることが大事です。一番良いのはお昼寝をさせることですが、なかなか寝付けない場合は「鼓動よりも少し遅いリズム」を意識して布団の上からトントンと優しく叩いてあげましょう。
眠くなさそうな場合は、冷たいジュース、甘い物、温かいスープなど「感覚」を感じやすいものを使って、意識を完全に「現在」に戻します。お子さんの様子にもよりますが、「○○ってアニメ、何曜日にやってたっけ?」など曜日を感じさせる質問をするのもおすすめです。
飲食を受け付けないような場合は、音楽、香り、毛布などの感覚を使って、やはり現在に戻します。お子さんの好きな遊びがあれば、それをさせるのもいいでしょう。
2:夜寝る前にも引きずっていれば再び「全肯定」で安心させる
発達障害のお子さんは「眠ってリセット」ということをしにくい傾向にあるため、精神的な無力感などを引きずったまま就寝すると、朝起きてもイライラしたままで、その日の学校生活などに響く可能性があります。
そのためお子さんの様子を見て必要そうであれば、「今日は大変そうだったけれど、ちゃんと立ち直れて偉いよ」「お母さん、○○君が大切だから戻ってきてくれて嬉しいよ」などと声をかけて全肯定してあげましょう。
お子さんの成長度合いや性格によっては、そのまま一緒に親が隣で寝てもいいでしょう。
もう忘れている場合は掘り返す必要なし。明るく「おやすみ」を言えば十分
もちろん夜寝る前の段階で、お子さんがパニック状態になったことを忘れている場合はわざわざ掘り返す必要はありません。明るく「おやすみ~」というだけで十分です。
まとめ
発達障害の子がパニック状態になっている(なりそうな)ときに、最優先すべきは「物理的な意味での安全の確保」と「刺激を減らすこと」です。親まで焦って「大丈夫!?」「何があったの!?」と声をかけると逆効果になりかねないので、落ち着いて対応することが大事です。
その上でお子さんの疲れ切った心を「全肯定」「共感」の精神によって労わってあげるのがポイントです。率直に言って親もあわててしまいがちですが、「冷静なフリ」をして何とかしてあげましょう。