発達障害の子が学校にiPadやパソコンを持っていくための5ステップ
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では、発達障害のお子さんが学校にiPadやパソコン(ICT端末)を持ち込み、学習をスムーズに進めるための具体的な手順について解説します。
「黒板の板書が苦手で、学校そのものへのやる気が低くなっている」「家でIT機器に慣れているし学校でも活用できないだろうか」と悩んでいる方は少なくないと思います。そこで本記事では、発達障害の子の学校でのiPadやパソコンの活用例、持ち込みの許可を取るに際して関係してくる「大人の事情」、持ち込む許可を取るための手順などに関してお伝えしていきます。
発達障害の子が学校の授業を受けやすくなる場合も|活用方法2例
iPadやパソコンを活用することで、発達障害のお子さんが学校の授業を受けやすくなるかもしれません。活用例を2つ紹介します。
1:iPadで黒板を撮影する
発達障害のお子さんの中には、黒板の内容をノートに書き写すことを苦手としている人が少なくありません(短期記憶が弱い、視線移動が苦手、などが理由です)。ですがiPadの写真機能で黒板を撮影すれば、板書をせず授業に集中できます。
手で文字を書く機会が大きく減るものの、それ以上のメリットがあると考えられます。
ちなみに大学の講義などでは当然のように「板書撮影」の機会が設けられている場合もあります(それだけ合理的ということです)。
2:パソコンをノートの代わりにする
手書きのノートを同じような感覚でノートを使うこともできます。発達障害のお子さんの中には「字を書くこと」を苦手としていても、キータッチはスムーズにできる子が少なくありません。
大人の感覚では「かえって大変なのでは?」と感じるかもしれませんが、現代の社会人が仕事でパソコンを標準的に使用していることを考えれば、文字入力のスキルを早期に習得することは、長期的にも非常に効率的で理にかなった選択と言えます。
発達障害の子が学校にiPadやパソコンを持ち込む相談が難航しても仕方がない
その発達障害のお子さんにとってiPadやパソコンが役立つのであれば毎日学校に持ち込めるのが理想ですし、先生方としても持ち込んでもらう方が楽になるかもしれません。
ただ、実際にはいわゆる「大人の事情」もありますから、持ち込むための相談が難航する可能性はありますし、最終的に持ち込めないという結論になってもおかしくありません。
外部(自治体全体など)で足並みを揃えるために時間がかかる場合もある
特に「前例のないこと」の場合は、導入することが何かと難しく、最初は「自治体全体で足並みを揃えないと……」という返答がくる可能性もあります。
すると親としては内心苦しくなるかもしれませんが、校側にも組織としてのルールやセキュリティ上の事情があるため、まずはその背景を丁寧に聞き取ることが大切です。その上で、懸念点を一つずつクリアできる対案を準備していきましょう。
最終的に「持ち込めない」となっても受け入れる
最終的に「持ち込めない」という結論になる可能性もありますが、受け入れるしかありません。
納得できない場合は転校などを検討するしかありませんが、そのケースでは「iPadやパソコンを持ち込めないこと」だけでなく、他の様々な要素も考えて、本当に転校するかどうかを決めましょう。
発達障害のお子さんが学校にiPadやパソコンを持ち込めるようにする5つの手順
それでは発達障害のお子さんが学校にiPadやパソコンを持っていけるようにするための手順を紹介していきます。
学校側の理解度、普段のお子さんの様子、学校側と親子の信頼関係の強さなどによってスキップできる工程もあれば、状況によって前後する工程もあると思いますが、参考にしていただければ幸いです。
1:大前提としてまずはお子さんがiPadやパソコンを一人で使えるようにする
学校側としては「紙のノートを同じ感覚でiPadやパソコンを使ってくれる」という状態でないと困るので、まずは家庭でお子さんがこれらの機器を使えるように教えてあげましょう。
最終的に学校にiPadやパソコンを持っていけなくても、デジタルデバイスを使えるようになることはお子さんのためになります。学校で使えなくても、家の中で活かせる機会はたくさんあるはずです。
2:学校に相談する
ひとまず学校に相談してみます。相談する際のポイントは以下の通りです(例を挙げて解説します)。
- 板書が苦手で困っています(現状の問題点)
- iPad(パソコン)を使えば板書がスムーズにでき、授業に集中できます(メリット)
- すでにiPad(パソコン)は使いこなせるので、あまりお手数はかけないと思います
学校側のスタンスや、学校との信頼関係によってはこれだけで認められる可能性もあります。
3:iPadやパソコンを持ち込みたい理由・持ち込んでいる事例を資料で説明
iPadやパソコンを持ち込みたい理由や、すでに持ち込んでいる事例を資料で説明します。会社のプレゼンなどで資料を使うと説得力が増しますが、それと同じです。
「事例に関する資料」ですが、単に「この学校では認めています」だけでなく、「認めていて効果が出ています」ということも交えて伝えたいところです。
説得するための資料の例
では資料の例をいくつか挙げます。
- 知能検査や視機能検査などの結果まとめ、専門家からの意見まとめ
- これまでのお子さんの成績表、ノート、テスト
- iPadやパソコンの導入事例(お子さんに近い事例をマーキングするとわかりやすい)
- 使いたいiPadやパソコンを見せる(アプリケーションも入れておく)
成績表、ノート、テストは「これほど努力している」「にもかかわらず結果がついてきていない」と示すために用意します。単に「成績が悪いです、ノートも取れていません」という印象にならないように気を付けたいところです。
また、使いたいiPadやパソコンを持ち込み、実際に使ってみせることで、先生などに「そういうことか!」「確かに役立つ!」などと思ってもらいやすくなります。実物を見せるとスムーズに理解が進むかもしれません。
4:想定される問題点への対応方法を示す
学校側から「こういう問題点があるのでは……」と言われる可能性があるので、できる限り対応方法を示しましょう。具体的には例えば以下の通りです。
学校のLANを使うことのリスク
これについてはiPadもパソコンもオフラインで使える範囲の機能で済むはずですから問題はないはずです。学校側もネットワーク関連のセキュリティには細心の注意を払いたいはずなのできちんと説明しましょう。
高額機器を使うことのリスク
保護フィルムや破損防止のためのiPad用ケースやパソコン用ケースを家庭で用意します。また、「学校側は機器の破損・紛失に関する責任を一切負いません」という内容の契約を書類で交わすのもいいでしょう。
「教師に使い方を聞かれても困る」と言われたら?
先述の通り、お子さんが一人でiPadやパソコンを使いこなせるようにしておけば問題はありません。
万が一お子さんが使い方を忘れた場合に備えて、親が自作した視覚的にわかりやすい「iPadの写真機能の使い方説明書」「パソコンの立ち上げ方法・文書作成方法の説明書」などを持たせるのもいいでしょう。
「周りの子に説明する手間がかかる」と言われたら?
iPadやパソコンの持ち込みを始めると、しばらくクラスメイトから質問攻めがあると思います。対応するためにはiPadやパソコンのロック画面などに説明書きをしたり、説明するための手紙を先生に渡したりするといいでしょう。手紙には以下のような内容を書きます。
- ○○は黒板を見て字を書くことが少し苦手なのでiPad(パソコン)を使っています
- iPad(パソコン)は皆さんが使っているノートと鉛筆のようなものです
- iPad(パソコン)を皆さんに貸すことはできないのでご理解くださいね
これを先生などに読んでもらえばクラスメイトは理解してくれることでしょう。それでもある程度質問は来ると思いますが、その都度答えたり、手紙のコピーを見せたりすれば問題はないはずです(必要経費と考えましょう)。
「他の子が持っていきたいと言い出したら困る」と言われたら?
これについてはあなたのご家庭が責任を負う必要はありません。他の子が「持っていきたい」と言い出した場合は、学校側が許可するかどうかその都度判断すればいいだけです。学校には以下のように伝えれば十分です。
- お手数をおかけする可能性を作ってしまい申し訳ございません
- 他のお子さんへの対応については、学校側の基準に沿ってご判断いただけますと幸いです
実際、あなたのお子さんをきっかけに学校側が柔軟になっていく可能性もあります。ただし、「これを機にフットワークを軽くしてはどうですか?」のような言い方は嫌味に聞こえかねないのでやめておくのが無難です。
5:正式に許可が出て、持ち込み開始|それ以降も様子を報告してもらう
学校から正式に許可が出たら持ち込みを開始できます。ただし、例えば「担任の先生だけが口頭でOKを出した」などの場合、後にトラブルにつながる可能性もありますから、必要に応じて校長先生などからも許可を取ったり、各種書類を作ったりしましょう。
また、お子さんが学校でiPadやパソコンの使用をスタートしたら、随時学校からお子さんの様子を説明してもらうようにしましょう(お願いしなくても恐らく教えてもらえるはずです)。
まとめ
「許可取り」が完了するまでに苦労する可能性もありますが、学校にiPadやパソコンを持ち込むことで、発達障害のお子さんの学校生活が大幅に楽になるかもしれません。
許可を取るためには今回紹介した内容を参考にしつつ、「感情」ではなく「論理」で説明していくことが大事です。また、日頃から学校との信頼関係を構築し、お子さんの様子を先生方にじっくり見てもらうことも必要と言えます。