発達障害の子のAT使用例3つ+学校にATを持ち込むための3ステップ
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では、発達障害のお子さんの学習や生活をサポートする「AT(アシスティブ・テクノロジー:支援技術)」の活用について解説します。「そもそもATとは何?」「ATを学校で使いたい場合、先生方にどう説明すればいいのだろうか」などと疑問に感じたり悩んだりしている方は少なくないと思います。
そこで本記事では、ATの概要、発達障害のお子さんのAT使用例、学校にATを持ち込むための手順などに関してお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
発達障害の方のために役立つATとは?
ATとは「Assistive Technology」の略であり、身体機能をカバーするためのテクノロジー全般のことを指します。例えば、視力が低い人の眼鏡、聴力が低い人の補聴器などが該当します。
発達障害のお子さんの場合は例えば、字を書くことが苦手なのでパソコンで補う、言葉の意味が思い出せないので漢字辞書アプリを使うなどが当てはまります。もちろん発達障害でなくても、これらのテクノロジーを使って自分の「苦手」を補っている人もいます。
そのためATを使うこと自体は特別なことではありませんが、発達障害の子が学校で使うATは「周囲とは違いすぎる」「目立ちすぎる」などの特徴がある場合が多いため、学校などへの説明が必要になりやすいです。
発達障害のお子さんのAT使用例3選
それでは発達障害のお子さんのATの使用例をいくつか挙げていきます。特に学校生活を送るにあたって役に立つものが多いです。
1:iPadのカメラ機能で黒板の板書の代わりにする
発達障害のお子さんは「黒板⇔ノート」の視線移動が苦手だったり、短期記憶が弱く「黒板を見る」→「見た情報を一時的に覚える」→「覚えているうちにノートに書き写す」の工程で戸惑ったりする傾向にあります。そのため板書がうまくできない人が多いです。
ですがiPadのカメラ機能を使って黒板の写真を撮れば板書の必要はなくなり、集中して先生の話を聞くことができます。確かに手で文字を書くことも大事かもしれませんが、それよりも「板書で悩まず、授業に集中すること」の方が重要という考え方ですね。
2:電卓を使って桁数の多い計算をする
発達障害のお子さんの中には集中力が低く、3桁×3桁以上など複雑な計算をしているうちに途中で飽きてしまい、なかなか答えを導き出せない人もいます。ですが電卓を使えば、数秒で答えを出すことができます。
特に円周率の「×3.14」や、文章題の最後の計算など、「問題の解き方はすべて合っている」「にもかかわらず最後の計算で多大な時間を使う」などの場合は、電卓で時間を節約し、その分どんどん問題を解いて、算数の能力を鍛える方がいいという考え方もあります。
3:音声読み上げ機能を使って読書する
発達障害のお子さんの中には字を読むことが苦手な人も少なくありません。ですが、音声読み上げ機能を使えば本の内容を追うことができる人も多いです。
例えば学校の課題図書がある場合も、電子書籍版で購入して、各種アプリケーションを使えば読み上げさせることができます。教室内など音を出せないケースでは、イヤホンを使いましょう。
電子書籍化されていない書籍の場合は、保護者がパソコンでテキストデータ化(文字起こし)することで読み上げ可能になります。ただし、これには多大な労力がかかるため、必要に応じて別の方法も考えましょう。
発達障害のお子さんが学校にATを持ち込むための3つの手順
ここからは発達障害のお子さんが学校にATを持ち込むための方法を紹介していきます。事前の相談なしに「明日からiPadを持ち込みます」と伝えてしまうと、学校側も体制が整わず困惑してしまいます。そのため、事前の丁寧なアプローチが欠かせません。
1:お子さんの困り事に対して、お子さんに直接ATを提案する
例えば、お子さんから「黒板の字を書くのが苦手で全然授業についていけない」と悩みを打ち明けられたら、「iPad」というタブレット端末を使って、写真を撮れば一発で解決するかもよ」などと提案します。
もちろんお子さんの方から悩み相談をしてくるとは限らないので、たびたび「最近学校で困っていることはない?」などと聞き出すことが大事です。
2:まずは家庭でATに慣れさせる
仮に学校側の許可を取れていても慣れていない状態でATを持っていくと、先生がフォローで苦労したり、トラブルが起きたりする可能性があります。そのためまずは家庭でATを使って慣れさせておくことが大事です。
例えばiPadで黒板の写真を撮ることが目的であれば、「家の中で指定の場所にあるものを、親の操作サポートなしで撮影できる」くらいのレベルにはなっておきましょう。
なお、このあと学校側の許可を求めることになります。そのため万が一、学校での使用許可がすぐに下りなかったとしても、家庭内で扱えるデジタルツールが増えることは、お子さんの将来の選択肢を広げる大きなプラスになります。無駄にはならないと捉え、まずは家庭での習得を進めましょう。
3:学校側に相談して許可を求める
お子さんがATに慣れたら学校側に許可を求めます。例えば「iPadで黒板を撮影したい」という場合、以下のように説明しましょう。
- 黒板の板書で苦労しています(現状の困り事)
- iPadで黒板を撮影すれば解決できると思います(解決方法)
- 手で書く機会が減りますが(デメリット)、撮影すれば授業に集中できると思います(妥当性の説明)
- すでにiPadを使えるようになっています
ポイントは「○○で苦労しているのでATで解決したいです」「ATを使うことで○○というデメリットが生じますが、○○というメリットの方が大きいです」「すでに使えるのでご安心ください」という流れで説明することです。
まとめ
発達障害のお子さんがATを利用することについて解説しました。学校側にも様々な事情があるため実際に持ち込めるようになるまで時間を要する可能性もあります(学校の外部との相談が必要になるケースもあります)。
ただ、いずれにしても「○○で困っています」→「□□で解決できます」→「△△であるため持ち込むことは妥当です」→「もう使えるようになっています」と説明し、持ち込めるようになるまで粘り強く相談することが大事です。