発達障害の子が客観視できるようになるための5つの方法
この記事では、発達障害のお子さんが自分以外の視点を持ち、物事を多角的に捉える「客観視」の力を身につけるための具体的な方法やポイントについて解説します。
「主観的にしか物事を考えられない」「周りのことを考えることができない」などお悩みの方は少なくないと思います。そこで本記事では、客観視の定義、発達障害の子が客観視できるようになる年齢の目安、客観視が苦手な理由、客観視できるようになるための方法、客観視を教えるにあたっての注意点などに関して解説していきますね。
客観視とは?|発達障害の子はいつからできるようになる?
客観視とは、「主観的な(個人的な)感情や意見による判断や評価」を排除して、第三者的に物事を捉えることを指します。言い換えると「大多数の人はどのように見るか」を推測する能力のことですね。
発達障害で客観視が明確にできるようになり始めるのは10~12歳頃から
定型発達のお子さんが明確な客観視(メタ認知)を意識し始めるのは9〜10歳(小学校高学年)頃ですが、発達障害の特性を持つお子さんの場合は、10〜12歳頃から緩やかにその兆候が見られるようになります。ただ、もちろん個人差はありますし、幼少期からも全く客観視ができないわけではありません。
発達障害の子が客観視を苦手とする傾向にある2つの理由
それでは発達障害のお子さんが客観視を苦手とする傾向にある理由をいくつか紹介していきます。
1:他人の立場や気持ちを考えることが苦手
発達障害(特に自閉症スペクトラム)のお子さんは他人の立場や気持ちを推し量ることが苦手な傾向にあります。客観視のためには「自分以外の人(つまり他人)はどう思うのか」を考えることがとても重要ですから、発達障害の子は客観視も苦手になりやすいということですね。
2:考えたことをすぐに発言・実行する傾向にある
特に客観視そのものに慣れないうちは「主観的に物事を考える」→「すぐ発言・実行する」という傾向にあります。そのため本来は客観視する能力がある程度身に付いていても、結果的には主観的に発言・行動しているとみなされてしまうかもしれません。
ただ、これについては客観視そのもののトレーニングをしつつ、成長するとともに思考力が上がってくれば自然と改善されていく可能性が高いです。
発達障害の子が客観視を身に付けるための5つの方法
それでは発達障害のお子さんが客観視を身に付けるための方法をいくつか紹介していきます。
1:一つの議題に対して色々な考えを出すゲームをする
例えば「ドラえもんで一番好きなキャラと理由は?」という議題に対しては、お子さんは「ドラえもんが一番」「かわいいから」などの答えを持つことでしょう。
そして、この議題に対して「別の答え」を本人にいくつも出させます。これにより「本人だけの考え」から離れて、「こういう考えの人もいるかもしれない」と考えることになり、まさに客観視のためのトレーニングになります。例えば以下の通りですね。
- のび太:のんびりした姿に憧れる
- ジャイアン:怖くても優しい部分もある
- しずかちゃん:穏やかでかわいらしい
「友達はどう考えるか」を考えるとさらにトレーニングになります
また、「友達の○○君はどう考えるだろうか」などを考えると、さらにやりやすくなります。そして発達障害の子の場合、抽象的なことが苦手な傾向にありますが、「○○君」という具体性が一つ入ることでさらにイメージしやすくなるかもしれません。
2:「事実」と「感想・解釈」を分けるゲームをする
例えば「日本の首都は東京です」「多くの人は東京に住みたがっています」という文章があった場合、前者は「事実」で、後者は「感想・解釈」ですよね。
様々な文章を作って、お子さんに事実と感想・解釈を分けるゲームをさせてみてはいかがでしょうか。特に国語的・論理的なことが好きなお子さんの場合、純粋に楽しめるかもしれません。
さて、事実と感想・解釈をきちんと分けて考えられるようになることには主に以下のメリットがあります。
- 独りよがりの考えで周りを置いていかなくなる
- 嘘や詭弁(きべん)に惑わされにくくなる(だから君は絶対に東京に住むべきだよ、など)
- 「失敗した」「自分はダメな人間だ」と不必要に落ち込みにくくなる
- 「成功した」「自分は周りよりも優れた人間だ」などと調子に乗りにくくなります。
3:日記を書く
日記をつけることは、「自分がそのとき、どのような言動を取ったのか」を一歩引いて振り返る優れたトレーニングになります。同時に、特性によってばらつきが出やすい過去の記憶を整理し、定着させる力(ワーキングメモリ)を鍛える効果も期待できます。
ただ、いきなり本格的に日記を書くのは難しいので(文章を書くことも苦手かもしれません)、「事実1つ+感想1つ」で構成された1~2行の日記から始めるといいでしょう。例えば「今日はサッカーをした」「楽しかった」などでOKです。
「楽しかった」の部分は「本人の感想=本人にとっての事実」なので「事実」でもありますが、それでも事実と感想を分けてこの手法で日記を書くことには意味があります。
慣れてきたら「他人日記」にも挑戦する
通常の日記に慣れてきたら「他人日記」にチャレンジするのもいいでしょう。例えば「今日、○○君はサッカーをしていた(事実)」「楽しそうだった(感想・解釈)」などですね。
自分事ではなくなるので客観性を身に付ける効果がさらに期待できますし、発達障害の子が苦手とする傾向にある他人の気持ちを考えるトレーニングにもなります。
4:日頃からできるだけ色々な人と話す、外の世界を見せる
特に発達障害のお子さんは「自分の世界」に閉じこもる場合が少なくないため、日頃からできるだけ色々な人とコミュニケーションを取る機会を作ってあげましょう(様々な人の考え、思想、発想などを聞きます)。難しければ最初のうちは家族が積極的に会話するだけでも構いません。
また、「家遊びが好き」なら「外遊びも教える」、「犬が好き」なら「猫の良さも教える」など、外の世界を見せてあげることも大事です。ただしあくまで「見せる」だけにするのが基本です。「こっちの方がいい!」「こっちを好きになりなさい!」などと押し付けるのは好ましくありません。
5:そもそも「客観視」と「客観視の大切さ」について教える
そもそも「客観視とはこういうもの」、「○○だから客観視は大切」とお子さんに教えておくことも大事です。特に発達障害の子は「周りからなんとなく学ぶこと」が苦手な傾向にあるため、言葉で直接的に伝えないとかなりの年齢になるまで、あまり理解しない可能性があります。
発達障害の子に客観視を教えるにあたっての3つの注意点
続いては発達障害のお子さんに客観視を教えるにあたっての注意点をいくつか紹介していきます。客観視そのものは大事なことですが落とし穴もあります。
1:完全な客観視はできない。あくまで「できるだけ」でOK
何をもって「客観的である・客観的でない」を判断するのかも場合によっては曖昧ですし、人間である以上は少なからず主観が入るのも仕方がないことです。そのためあくまで、「できるだけ客観的に考えられるようになろうね」くらいに伝えるのがおすすめです。
特に発達障害のお子さんの中には完璧主義の子も少なくありませんから、この辺りのことも教えておかないと「客観視しないと」とプレッシャーを感じたり、「客観視できていない」と過剰に自分を責めたりする恐れもあります。
2:「あなたの意思は尊重される」「あなたはどう考えてもいい」と教える
客観視について教えると、そこに気を取られすぎて「自分自身はどう思っているか」をないがしろにしたり、自分の考えを軽視したりするようになる恐れもあります。
そのため「客観的に考えることは大事」「だけどあなたはどう考えても構わないし、あなたの考えは尊重される」「多数派に入らなくても大丈夫」などと教えるといいでしょう。
3:決断の速さが必要なときもある
本当に客観的に判断するためには情報収集や分析が必要になることもありますが、そこにこだわりすぎるとキリがありません。そのためすべての情報が揃わなくても、状況に応じてある程度の段階で「決断・判断」を下す柔軟性も必要である、と伝えていきましょう。決断の早さが重視されることもあると教えておくことをおすすめします。
まとめ
生きていく上で常に客観視が必要というわけではありませんが、「ここまでは事実で、ここからは自分の感想」「私はこう思うけれど、世間一般ではこう考えるはず」などの考え方ができるようになると視野が広がります。
なお発達障害のお子さんの中には、客観視のために欠かせない論理的思考力が高い子も少なくありませんから、意外にあっさりと客観視ができるようになるかもしれません。